「ノー・リミット」第10回月例会のご報告(議事録)

令和6年1月28日に行いました「ノー・リミット」第10回月例会の内容を議事録にしました。

今回はWindows10のサポートが来年に終わることを受け、windows11への移行をどのように考えるのか?
また、それに際してスクリーンリーダーはちゃんと対応するのか?
では、どのような対策や準備をするべきか?
そして最近のパソコンのトレンドは?
などについて、いろいろとみんなで話し合ってみました。
チームハーネスのパソコンご意見番の松井さんにも大変なご尽力を賜りました。いつもありがとうございます!


プログラム


プログラム詳細

参加者あいさつ(10:00~10:30)

今回は初参加者が3名いらっしゃいました。チームハーネスに通われているナカゾノさん、あいあいセンターでノーリミットを知ったナラハラさん、
そしてこれまでの月例会で、一番遠い所から参加してくださった大阪の丹藤さん!!
しかも、この丹藤さん、驚きなのは日帰りで大阪→福岡→沖縄→大阪というルートだそうです。日帰りで…。もうね…衝撃以外、何物でもありませんでした。
ただ、ほぼ全盲であられるのに、一人で来られました。本人いわく、切符の手配は自分でするけど、交通機関の乗り継ぎはすべてアテンドをお願いしたから大したことはないとご自分でおっしゃっていましたが、いやいや、十分すぎるほどに大したことだと思います。
でも、視覚障害者でもこれだけアクティブに動けるんだという本当に素晴らしいお手本のような方でした。みんな、とても元気と勇気をいただいた感じがしました。


今月のテーマ1:
「windows10のサポート終了を迎えるにあたって視覚障害者が知っておくべき、準備しておくべきことについて」(10時30分から11時まで)

ではまずはテーマ1「Windows10のサポートが終了」という内容です。

2025年10月にwindows10のサポートが終了するとなっています。すなわちWindows11に来年の10月には移行する必要があるわけです。
もちろん、サポートが切れてもプライベートでネットなどを介さずに使う分には特に問題はないわけですが、インターネットを介したり仕事で使うなどといった場合は、やはり移行が必要でしょう。
それなら、現在持っているwindows10の自分のパソコンからWindows11にアップグレードすればいいと思われるかもしれません。確かにそれは可能です。
しかし、それは全てのパソコンでできるわけではないのです。実はwindows11を入れるために必要な条件というものがあるのです。
それは何かというと、すごくバッサリした形で言えば、「古いパソコン、能力不足のパソコンは無理」ということです。次からその具体的な内容を述べます。


パソコンの頭脳のランクと世代

パソコンにはCPU、いわば頭脳があります。そして、この頭脳には優劣があります。
これを上下で考えると、現行のCPUというのは、

この7種類になります。つまり、一番上の「core i9」が最高ランクのCPUなわけです。
そして、私たち視覚障害者が音声を用いてパソコンを操作することを考えたら、下の4つは切り捨ててください。つまり、
最低でも「core i5」
を選んでいただきたいのです。

次は世代についてです。世代というのは、よくiPhoneなどでも耳にするかと思いますが、平たく言えば「販売された年度」です。つまり古いか新しいかということです。
これは第1世代を最初として、現在の最新は第14世代まで販売されています。
つまり、core i9もcore i7もcore i5にも全て世代があるわけです。
そして、当然の話、古いものより新しいもののほうが能力は優れているわけです。
なので、これがどういうことになるかというと、いくらcore i7がcore i5よりCPUが優れていても、
core i7の第1世代とcore i5のだい10世代での比較なら、i5のほうが能力は確実に優れているのです。これが世代です。
先ほどのCPUを上下で並べたのに対して、こちらは、いわば横で考えるわけです。

そして、肝心のWindows11に必要な世代というものがあり、これは
「第8世代以降」
となっているのです。つまり、第7世代以降のパソコンではwindows11へのアップグレードは無理というわけです。
そのため、現在、自分が持っているパソコンが第7世代より前のものなら、アップグレードは不可能なので、もはやWindows11が入ったパソコンを買い直すしかないという結論になります。


目盛りの大きさ

では次に「メモリ」についてです。これもよく「作業する机の大きさ」にたとえられていることが多いです。
つまり、小学校で使うような小さな机の上で給食を食べながら書道の道具を用いて習字をしながらそろばんをするといったことはほぼ不可能です。まあ実際にこれらを同時にすることなどそもそも無理なわけですが、ここでは机の上に置いておくことや配置を入れ替えたりすることが極めて難しいといった意味でとらえてください。
そういう意味で、この机の大きさがもっと大きな机なら余裕で置くことも場所を入れ替えたりすることもスムーズにいくわけです。このスムーズかどうかがこの机の大きさ、つまり「メモリの大きさ」にかかわってくるということなのです。
実は、これは私たち視覚障害者が音声、つまりスクリーンリーダーを用いてパソコン操作をするためには最低4GB(ギガバイト」が必要と言われています。そのため、スクリーンリーダーを用いてパソコン操作をする人のパソコンのメモリはほぼ4GB以上となっているはずです。
それを踏まえて、現在では4GB、8GB、16GB、32GBぐらいが中心に販売されているわけですが、ではどれを選ぶのかというと、「16GB以上」だとチームハーネスの松井さんが言われています。
もちろん、8GBでも動きます。ただ、やはり先ほどの「堂さのスムーズさ」という意味では16GB以上が望ましいというわけです。
もちろん、作業内容が日記やメール、インターネット閲覧ぐらいなら8GBでもさほど問題ないと思いますが、これがやはり複数のアプリを同時に開いて作業する、例えばエクセルとワードを並行して使っていたり、
グーグルドキュメントやマイクロソフト365といったウェブを経由して作業を続けるといった場合には、そのスムーズさに少し懸念があるということです。
さらにはwindows11であったとしても、そこからさらなるバージョンアップは行われるわけで、それについていけない可能性も否定できないのです。
そのようなわけで、windows11への必要条件としては8GBなのですが、
ここでは16GB以上をおすすめしているのです。


自分のパソコンの性能の確認方法

ここまで話してきましたWindows11へのアップグレードの必要条件をまとめると、

となります。では、自分のパソコンの性能が必要条件を満たしているかどうか、その確認をどうするのかを説明します。

なお、これはPCトーカーでもNVDAでも同じです。

1.windowsキーを押しながらsキーを押します。「検索ボックス、ここに入力して検索のエディット、文字入力」と読み上げて文字が入力できるエディットボックスが出ます。
2.「システム情報」と入力してenterキーを押します。「システム情報のツリービュー、フォルダ選択、システムの要約」と読み上げます。
3.Tabキーを1回押します。「システム情報のリストビュー、選択、OS名:」と読み上げます。つまり、この項目はOSの名前を言っているわけです。ここで私のパソコンで例を出すと
OS 名 Microsoft Windows 10 Proとなっています。つまりまだ私のパソコンのOSはWindows10ということになります。
また、ついでなので述べますと、そこから下矢印キーを1回押すと、「バージョン名」という項目で、ここではOSのバージョンを確認できます。
windowsのアップデートができているかの確認などは、ここで行えるわけです。
このようにいろんな情報が上下に項目として並んでいるわけです。ここから上下キーで項目を選択できます。
4.下矢印キーを数回押していくと「プロセッサ」という項目があります。ここで私のパソコンを例に出すと
プロセッサ Intel(R) Core(TM) i7-4600M CPU
@ 2.90GHz、2901 Mhz、2 個のコア、4 個のロジカル プロセッサ となっています。ここで上の行の「core i7」がCPUであり、
その後の「-4600m」というのが世代です。この千の位が世代を表しています。つまり
2000番台なら第2世代、14000番台なら第14世代ということになります。
ちなみに、それなら第1世代は1000番台なのかというと、これだけが特例で3桁となっています。つまり、1000番台は存在しないというわけです。 なお、第10世代以降は通常5桁ですが、4桁で表記されているものもあります。第1世代が3桁で表記されているので、1で始まるものについては最初の2文字が世代を表すことになります。
つまり、例を挙げると、1350は第13世代、13500も第13世代ということになります。
詳しくは以下のリンクの記事をご覧ください。
パソコンのCPUの世代の見分け方
パソコン選びで重要なCPU性能、あの「番号」からランクと世代で見極める
また、世代の販売年や実際に世代に寄ってどんな違いがあるのかを超マニアックに知りたい方は以下のリンクをどうぞ。私自身も読んでいて頭が割れそうですのでご注意ください。
インテルCPUの世代や性能の比較一覧
話を本編に戻すと、結局、残念ながら私のパソコンはcore i7ながらも第4世代ですので、Windows11へのアップグレードは不可能ということになります。自分で書いていて悲しいです。
5.さらに下矢印キーを数回押すと「インストール済みの物理メモリ (RAM)」という項目があります。私のパソコンを例に出すと、 インストール済みの物理メモリ (RAM) 8.00 GB
となっています。つまり、私のパソコンの目盛りは8GBということになります。
皆さんもこのやり方でご自身のパソコンの性能を確認してみてくださいね。


パソコンを購入する時に気を付けたいこと

さて、先ほどは自分のパソコンの性能を確認して、Windows11へのアップグレードができるのかを確認するというものでした。
そして、私のようにその要件を満たさないパソコンで、windows11を求めるなら、もうWindows11が入っているパソコンを購入するしかありません。
では、どのようなパソコンを購入すればいいのでしょうか?先に挙げた条件を満たすものならよいでしょうか?
実は、先ほどの条件にもう少し注意することがあるので、それを今から説明します。


記憶装置にはHDDとSSDの2種類がある

さて、先ほどの3つの条件と同じくらい大切な項目があります。それは記憶装置です。
つまり自分が作成したデータを保存したり、その保存したデータを呼び起こして作業をするといった「データの読み書き」をする装置のことです。
そして、これには
HDD(ハードディスクドライブ)
SSD(ソリッドステートデバイス)
の2種類があります。えーと、いろいろと理由はあるのですが、結論だけ先に言います。SSDがついているパソコンにしてください。
もちろん、HDDよりSSDのほうがお値段は高いのですが、

というメリットがあまりにも大きいのです。そんなに大した違いはないんでしょ?と思われる方もいるかもしれませんが、はっきり言って全然違います。
はっきり言って死ぬほど後悔するレベルで段違いです。
そして何より、こわれにくいということが一番重要なポイントです。せっかくデータを大事に保存していても、その装置が壊れてしまったら元も子もありません。
そのほかにもなぜHDDがだめなのか?SSDが良いのかといった理由については以下のリンクの記事をご覧ください。
SSDの寿命は何年が目安?HDDとどっちが長い?長く使うコツを解説

中古と新品ではどっちがいい?

さて、次はパソコンを新品で買うか中古で買うかの選択です。
ここまで私があれこれ言ってはいますが、あくまでも「個人的な意見」です。責任は取りません。あくまでも参考としていただいて、最終的な判断はご自身でお願いします。
それを踏まえたうえで、結論を先に言わせていただくと、中古でいいんじゃないかと思っています。
もちろん、これにも理由はあります。順番に説明します。


値段が単純に高い…

まずは値段です。現在、この記事を書いている日の値段を調べて比較しますと、 新品の場合(ヨドバシカメラ調べ)
[ノートパソコン/HP 15-fd0000 G1モデル/15.6型/Core i7-1355U/メモリ 16GB/SSD 512GB/Windows 11 ]…
¥144800
となっています。core i7の第13世代ですね。
では次に同じような性能で中古を調べたいのですが、さすがに第13世代の中古などは存在しないので、windows11へのアップグレードが可能とされているボーダーラインの
第8世代
で調べたいと思います。つまり、他の条件も入れると、
Windows11、core i7 SSD 16GB 第8世代
となります。ヤフオクで調べてみると、その値段は…?
5万5000円(送料無料)でした!!ちなみにその商品ページは以下のリンクからどうぞ。 東芝ダイナブックの商品ページ
とは言ってもですよ?第8世代と第13世代という開きがある以上、この値段差は仕方ないと私も思います。なんなら、第13世代の新品をおすすめしてもいいくらいです。
ではそれなのに、なぜ私は中古を推しているのか?その理由が次の章です。


Windows12??

実はですね。2025年に「windows12」が出るそうです。Windows12という名称ではまだ言われてないものの、それに沿ったものが発表されるとのことです。
その記事は以下のリンクからどうぞ。
Windows 12登場予定はいつ?
ということはですよ?いずれ近いうちにwindows11のサポートが今回のWindows10のサポート終了と同じように起こるということです。
それがいつなのかというのは明確ではないにしろ、ここまでの流れから5年ぐらいで起こりそうな気がするというのが私の予想です。
それなら、もういっそwindows12を買ったらいいんじゃないの?と思われるかもしれませんね。
しかし、そうもいかない事情があるのです。それは次の章に書きます。


windows11でもダメなものが、Windows12なんてあかんに決まってるやろ?

これはスクリーンリーダーの話になります。じつは次のテーマなんですけど、結局、ここに関わってくるので一緒に話します。
実はWindows11にPCトーカーが完全に対応できていないところがあるのです。例えばエクスプローラーを音声で読み上げなかったりします。正直、これを読まないのなら、どうやってパソコン操作するんだと言いたいんですが…。
そして、そんなwindows11を完全に読まないものがWindows12に対応できるとはとても思えないのです。
ただ、このwindows12に対応できるかどうかというのはNVDAでも未知数なのです。
そしてまあ、そんな出たばかりのwindows12のパソコンなんて、とても値段がお高くていよいよどうにもならないでしょう。
また、今回のWindows12はAIがどうのこうのと言われているような代物なので、こういった新しいものにすぐ飛びついたら、あとからどんどん良いものが出るというのはパソコンやスマホなどではよくある話です。
ということは?まとめますと、

ということなのです。私が中古でwindows11を購入すればいいのではと提唱する理由、ご納得いただけましたでしょうか?
いや、それでもやはり第13世代の新品を扱ってみたいというお気持ちもよく分かります。私もお金に不自由してないのなら新品が欲しい、最新のものが欲しい!
ただ、みんながみんな、そんなにブルジョアではないと信じたいので、中古をおすすめしているわけです。

あと、これは余談ですが、アップグレードは第8世代以降が条件と書いたのですが、実際はその前の世代でも可能なモデルがあるそうです。
ただ、それを判別するのは素人にはかなりややこいので、一般的な意見として第8世代としました。そんなマニアックな情報も教えろという方は以下のリンクをご覧ください。
windows11へのアップグレード要件は基本は第8世代?でもその前の世代でも?

ただ、いくらできるとしても第4世代や第6世代のものより、おとなしく第8世代以降のものを購入した方がいいと思いますけどね…。


結局、アップグレードよりも購入したほうが早い

そして、ここまで長々と書いてきましたが、そもそも、ご自身が現在持たれているパソコンが上記の条件をクリアしていることって結構珍しいと思うわけです。
なぜなら、5年前の時点で新品を購入した人以外は第8世代以上という条件をクリアできないからです。
そして中古パソコンを購入した人なら、なおさらこの第8世代条件をクリアできないはずです、私がそうだったように。
でも、それでも第8世代以前のものでもアップグレードできるとも書きました。そうです。できるのもあります。
ただ、思い出してほしいのは、それはあくまで私たち視覚障害者のように「音声」を使わない人たちの話です。いや、視覚障害者だろうと晴眼者だろうとアップグレード自体はできます。
問題はその先です。たとえ、アップグレードはできたとしても、それがまともに動くのか、その保証がないのです。古い世代でも音声を使わなければパソコンに対する負荷は小さいのでまともに動く可能性もあります。
しかし、音声というのはパソコンにとってかなりの負荷なのは間違いがありません。そのため、ぎりぎりの能力でアップグレードしても、それがまともに動かない確立のほうが高いわけです。
そのため、結論を言うと、このタイミングでWindows11が最初から入った中古パソコンを購入したほうがいいですよということになるのです。
ただ、現在よりも年度代わりの3~5月ぐらいが中古パソコンの在庫が増える時期になりますので、3~5月にwindows11が入っているパソコン、それも上記の条件を満たしているパソコンを購入すればいいのではと考えるわけです。

実際に16GBと8GB、最初から入っているWindows11とアップグレードさせたwindows11では何が違うの?

実際に最初からWindows11が入っている16GBのパソコンともともとwindows10だったのをWindows11にアップグレードさせた8GBのパソコンの動きの比較を松井さんに実演してもらいました。
すると…結果はさほど変わらないなあという印象でした。ただ、これには理由があります。じつは、このデモンストレーションのためにこの日の朝に最新のアップデートを事前に行って、さらにそのまま電源をつけっぱなしにしていたそうです。
通常なら電源を入れた直後にいろんな負荷がかかります。マイクロソフトが勝手にアップデートを検索したりなど、バックグラウンド上でさまざまな動きが起こるため、本当はとても遅くなるそうです。
まあ、本当はこの差を体験してほしかったんですが…残念…。
ただ、この理由からも、自分のパソコンをアップグレードさせるよりも最初からwindows11が入っているパソコンを購入したほうがいいというわけなのです。
現在使っているWindows10はそのままでプライベートで使い続ければいいと思います。

結局、windows10とWindows11って何が違うの?私たちに関係あるの?

では、結局、何が一番大事なのかというと
windows10からWindows11に変わることによって私たち視覚障害者が受ける影響って何なのか?
ということなのです。では、それは何かというと、結論から書くと、全員に影響があるわけではないということです。
では誰に影響があるのか?それは「自分で設定などを扱おうとする中級者以上の利用者」です。
逆を言えば、自分では設定が分からない人や、設定を必要としないような内容鹿パソコンで扱わない人などはwindows11に変更しても特段、影響はないのです。
では、なぜ中級者以上なのか?順番に書いていきます。


設定画面が大幅に変わった

まあ、すでに答えは書いているようなものですが、設定画面が大幅に変わってしまうのです。つまり、「今まで、この設定はここにあったよね」というものが完全にどこかにいってしまっているわけです。
結局、その新しい配置を探さなくてはならないわけです。配置どころか項目の名前が変わっているものもあります。
例えばWindows10では「かんたん操作」だった項目が「アクセシビリティ」という項目に変わっていたり、
コンテキストメニューの中身が2層構造になっていたりなど、慣れるまで時間がかかりそうだなという感じなのです。


新しいimeとPCトーカーの相性が悪くて読み上げない

そして決定的なのはimeです。
そもそもimeって何?と思われる方に説明すると、簡単に言えばキーボードで日本語を入力できるように作ってあるプログラムのことです。
つまり、これのおかげで日本語が入力できる、逆を言えば、こいつがおかしくなれば日本語が入力できなくなるということです。
imeの役割について詳しく知りたい方は以下のリンクをどうぞ。
imeって何?
この「新ime」はwindows10の時にもありましたが、最初から入っているわけではありませんでした。いわば「旧ime」のほうが基本でした。
新しいimeを選ぶことも当然できます。しかし、この新しいimeとPCトーカーの相性がとにかく悪いのです。
そのため、imeの設定で「旧バージョンに戻す」という項目が用意されていて、ほとんどの人が旧バージョンに戻していました。そうでないと読み上げないからパソコンで作業ができないからです。
しかし、この「旧バージョンに戻す」という項目がWindows11になって、ものすごく分かりにくい所に移動してしまったのです。
見える人は探すのにそこまで負担ではないかもしれませんが、私たち視覚障害者は音声がないと操作できない、つまり設定が変更できないのに、その読み上げがないうえに分かりにくい場所に配置されてあるとすれば、これはかなり解決するのが難しいということになるわけです。
とりあえず、その場所について詳しく書いている記事がありましたので、知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
ご存じでしたか? Microsoft IMEの設定方法が変わりました【Windows 10 バージョン2004以降/11】
では、ここで何が言いたいのかと言うと、windows11が入っているパソコンをお店で購入する時に、この時点で
「imeを旧バージョンに設定しておいてください」
というふうに店員さんに伝えておくことが大事だと言いたいのです。
ただ、オークションのような所で購入する場合はそこまでの対応をしてくれるかどうかが正直な話、不透明ですので、できれば『アプライド』や「パソコン工房』などといった大手の中古パソコンショップで購入することをお薦めします。


PCトーカーじゃなくてNVDAなら大丈夫なの?

このような書き方をしていると、まるでPCトーカーだけが駄目なような印象を受けると思いますが、実際にはNVDAでも100点が取れるわけではありません。
結局、どのスクリーンリーダーでも、そしてそれ以外の事柄でもそうですが、新しいものには常に不具合が起こりえるわけです。
それを徐々に改善されるのをユーザー側は待つしかないわけです。
そういう意味ではPCトーカーもNVDAもナレーターも同じ土俵です。
しかしながら、その規模的なことで言えば、その改善スピード、範囲に関してはPCトーカーのほうがその変化に対応するのが遅れるのは仕方ないと言えます。
これは私の勝手な個人的な印象なのですが、PCトーカーはあくまで『コーチシステムが開発したさまざまなソフト専用の音声読み上げソフト」なので、Windows全体に対応するスピードが間に合わないのは仕方ないと思っています。
なので、私はスクリーンリーダーについては、
PCトーカーもNVDAもナレーターもすべて、基本的な操作ぐらいは使えるようになっておく
ということが大事なのではないかと思うわけです。ナレーターの音声も昔はとにかくひどかったですが、今ではかなり聞きやすくなっています。
また、ナレーターは日本語入力が全くダメでしたが、メモ帳に関して言えばちゃんと日本語変換・入力ができるようになっているのです。
ワード・エクセルといったオフィスソフトでは相変わらず日本語で読み上げてくれないのでどうにもなりませんが、メモ帳で読み上げてくれるとなれば、仕事以外でパソコンを使っている人にとってはそれで充分なのではないかと思うのです。

”白杖を持った笑顔の男性のイラストです”

今月のテーマ2
私たちが使うスクリーンリーダーは何を基準に選ぶべきなのか?

というわけで、ようやく次のテーマに移れます。それは先ほど触れたスクリーンリーダーに関してです。
先ほどの章の流れで言えば、どれを使うのかと問われたら「全て」という答えになってしまいます。
しかし現実的には一気に3種類のスクリーンリーダーの操作を覚えるのは至難の業でしょう。
じゃあ、どれを優先的に覚えたらいいかという話になるわけです。
それで言えば、私はやはりNVDAを推したいと思います。
その理由としては、まずは先ほど挙げた対応スピードも含まれます。では、それ以外の理由はないのか?それについて順番に話していきます。

ウェブブラウザを経由するアプリを使う場面が増えた

これは何かというと、インターネット上で作業するようなアプリが今ではかなり増えたということです。
有名なところで言えばグーグル関係です。
例えばグーグルドキュメント、グーグルスプレッドシートといった「ワード・エクセル」のグーグル版というものです。
これにならって、マイクロソフト側もウェブ上で使えるオフィスソフト「マイクロソフトオフィス365」をリリースしました。これもウェブ上で使うソフトです。
ではなぜわざわざウェブ上で作業をするようになったのか?それはいろんな人が同じファイルを使う「共同作業」に重点が置かれ始めたからです。
このシステムがなかった今までの時代では、例えば会議でみんなが使う資料を事前にメールなどで送付して各自のパソコンで開けたり印刷したりといった使い方が主でした。
しかし、現在では会議そのものがリアルで対面して行われるものではなく、オンラインによる会議がコロナ禍の影響もあって一気に広がりました。
そしてそれは会議だけにおさまらず、テレワーク、つまり作業も会社に行って行うよりも遠隔地でのものが広がりました。
そのため、作業の進捗をいちいちメールで送ったりすることが面倒だなという理由から、インターネット上にファイルをアップして、そのアップしたファイルを他のユーザーからも閲覧することができるようにしたわけです。
そしてそれは閲覧だけにとどまらず、同時進行で作業ができるようにもなりました。つまり、自分が開いているファイルに他のユーザーが入ってきて内容を変更するといったこともできるようになりました。
つまり、「遠隔操作のほうが都合がいい」、このように思う企業や団体が爆発的に増えたのです。
そうなると、グーグルだけにシェアを奪われてはならぬと、さまざまな方面からさまざまなウェブ上で扱うソフトが誕生しました。
つまり、これは何が言いたいのかと言うと、ウェブ上で操作する需要が圧倒的に増えたということであり、
逆を言えば、これが使えないようでは仕事はもちろんのこと、多くのパソコン操作に関して不便を感じるケースが多いということになるのです。


1文字ナビゲーション

そしてウェブ上で作業をするとなれば、非常に大事なことがあります。それは「コントロール」と言われるいろんな機能の項目の事です。
それは何かというと、例えば、ラジオボタンやチェックボックス、ボタン、コンボボックス、エディットボックスなど、
ウェブ上で何か選択や実行をするための項目、それが「コントロールです。部品とも言います。
そしてその部品を扱うのにとても便利なのが、NVDAの「1文字ナビゲーション」という機能です。
これは先ほど述べた部品ごとにそれぞれ割り当てられているキーを1回押すだけで、その項目に一気にジャンプできるというものです。
例えば、上から3行目にボタンがあり、現在のカーソルが上から7行目、また上から15行目にボタンがあるとすれば、
Bキーを1回押せば上から15行目のボタンに一発でジャンプするし、シフトを押しながらBキーを押すと上から3行目のボタンに一発でジャンプするということになります。
各部品ごとに割り当てられている例を紹介すると、

このほかにもたくさんあります。これを使うとウェブ上での操作がすさまじく早く便利になります。
PCトーカーでもこれに対応しているものもありますが、全てではありません。せいぜい、Hキーでのヘッダーへの移動、Eキーでのエディットボックスへの移動ぐらいです。
これらの点から、やはりPCトーカーよりNVDAのほうが優位だと思います。

また、ナレーターに関しては先ほども言いましたように日本語の入力が不完全なため、PCトーカーより先にナレーターが脱落ということになります。
以上の理由により、やはりNVDA一択ということになるのです。
別の言い方をすれば、NVDAが一番活用できる範囲が広いと言えるわけです。
極論、ナレーターに日本語機能をつけたのがNVDAだと言っても過言ではないと思います。なぜなら、どちらもwindowsに準拠したスクリーンリーダーだからです。
というか、そもそもナレーターはwindows8の頃まで普通に日本語に対応できていたそうです。それがなぜかWindows10になって日本語に対応できなくなったそうです。改悪以外の何物でもないです。なぜそうしたのかが全く理解できません。
話がそれました。
というわけで、特にパソコンで私たち視覚障害者が仕事をしようと思うなら、やはりNVDAが最優先だということなのです。
そもそもPCトーカーだけが有料なので、そういった面でも企業にとってはNVDAがうれしい点でもあると思います。

ただ、あくまでこれは優先順位という話なので、1つしか扱えないより2つ、2つ扱えるより3つ扱えるほうがいいのは間違いありません。
というのも、この項目をPCトーカーでは読まないけどNVDAなら読んだ、
その逆にNVDAではこのように読むから分かりにくいけどPCトーカーのほうは分かりやすいといったケースなどもあります。
だから、あくまで優先順位なのです実際はNVDAさえ覚えたら自分の金額的な負担もゼロで済むわけですが、それでも知識として覚えておいて損はないわけです。
もしかしたらなんらかの不具合が起こって一時的にそのスクリーンリーダーが使えないといったケースも考えられるわけで、そんな時に代わりのものを使える技術があれば、盤石といえます。
さらに言えば、PCトーカーにしろナレーターにしろ、開発が急速に進んでNVDAより使いやすくなる可能性も十分にあるわけです。
これこそ私がNVDAを第一に推す理由であり、さらに欲を言えば全部知っておいてくれという理由なのです。


実はもう1つありますが…

スクリーンリーダーは主に3種類と書いているのですが、本当はもう1つメジャーなものがあります。それがJAWS(ジョーズ)です。
そんなメジャーなものをなぜ省いているのかというと、理由は2つあります。
まず1つ目が、通常なら読まないような画面や設定でも、自分でプログラムしてカスタマイズすれば読ませることができるようになるという上級者向けのものだからです。
例えばその企業独自のソフトを扱わないといけない状態で上記の3種類のスクリーンリーダーでは読まないような時、このJAWSでは自分、もしくはパソコンに詳しい方が自力でプログラムを組んで読ませることができるようにカスタマイズできる代物なのです。
ただ、逆を言えば、そんなケースが発生しない限り、別にJAWSでなくてもいいとも言えるのです。そのほかには上記の3種類より特に優れているというものは特にないと思います。

そして2つ目の理由は値段の高さです。これ、毎年リリースされているのですが、新規で購入しようとしたら20万円もします。
まあ、上記のようにこれでしか読ませる手段がないとなれば致し方ないかもしれませんが…そこまでして企業がその人を雇うでしょうか?
企業が誰かを雇いたいと思った時に、20万円もするソフトを入れないと働けないような視覚障害者を雇いたいと思うでしょうか?
それならそんなソフトを使わずとも働ける人を雇いたいと思うのが企業側の気持ちではないでしょうか?
だから、まずこのJAWSを使うケースというのは、もともと目が見えている状態で働いていて、だんだん視力が悪くなってスクリーンリーダーが必要になって
でも他のスクリーンリーダーでは全く読まないようなパソコンの構成だったという時に初めて、仕方なく購入していただけるといったケースではないかと思っています。
また、新規で20万円と言いましたが、一度購入した人は毎年20万円も払う必要はないです。「更新」することによって毎年新しいバージョンにすることができます。
ただ、その更新も当然無料ではありません。ではいくらか?6万円です。はい、毎年6万円です。
そのため、個人で購入しようとする人はほぼいないと思われます。そのため、今回、このJAWSは省いていたわけです。

さらに言えば、音声もそれほど聞きやすい音声でもありません。上記の3種類のほうが圧倒的に聞きやすい音声だと思います。
そのため、優先順位としては、このJAWSは、あくまで私個人的な意見としては一番下になったのです。

”白杖を持った笑顔の女性のイラストです”

その他の変更点

なんか途中からNVDA推進委員会みたいな感じになってしまいましたが、本筋に戻ってwindows10と11のその他の変更点について簡単に述べます。
まあ、ノベマスとエラそうに言っていますが、これはすべてチームハーネスの松井さんにご説明いただいたものです。その時の出村はバームクーヘン食べてただけなのです。すみません、勘弁してください。

1.マイクロソフトTEAMSが標準搭載に変更

今までは必ず入っていたSkypeがなくなり、その代わりにMicrosoft Teamsが標準搭載されます。しかし、このMicrosoft Teamsが私たち視覚障害者にとっては非常に使いづらいのです。
実際にSkypeは無料で使えるうえにPCトーカーやNVDAでも普通に使えて便利なものでしたので、私たち視覚障害者にとってこの変更は改悪と言わざるを得ませんね。
ただ、Skypeがこの世からなくなったわけではありません。マイクロソフトストアからダウンロードして使うことができます。

タスクバーからタイムランが消えた

正直、私は全く存じ上げない機能なのですが、このタイムランとは「前日作業したリスト」とか「1週間以内に開いたファイル」など、最近の履歴を表示してくれる機能でした。
Windows10ではタスクバーにあったそうです。それがWindows11では、なくなってしまっています。
ただ、先ほど「存じ上げない」という私の文体からも分かる通り、使っていなかった機能なので、これに関しては「まあ別にあってもなくてもいいか」ぐらいのものなので、ほぼ影響はないと思っています。

音声入力ができるようになった…けど??

そして音声での入力ができるようになりました。windowsキーを押しながらHキーを押すと作動します。
ただ、この音声入力機能ですが、これは私たち視覚障害者にとって全く使い物になりません。
なぜならスクリーンリーダーが読み上げている音声を拾ってしまうからです。結局、視覚障害者にとってはどうにもならない代物なのです。

その他の変更点については以下のリンクをご覧ください。
Windows 11の変更点とは?新機能やデザインを刷新した箇所について解説

”点字ブロックのうちの1つで「警告ブロック」といわれるものです。分岐点や止まってほしい時など、注意を促すためのブロックで、全て丸井点で構成されています”

実演コーナー

ここからは、この日に実演した内容を書いていきます。

グーグルスプレッドシート

グーグルの表計算ソフトです。ウェブ上で使うやつですね。
結果ですが、PCトーカーではセルa1から矢印キーでもタブキーでもセルの移動ができませんでした。どうしろというのでしょうか…。お手上げです。NVDAは当然問題なしです。

タイムカード管理アプリ『タッチオンタイム』

次は私が普段から仕事で使っているタイムカード管理アプリ『タッチオンタイム』です。
平たく言えばこれでタイムカードを打刻します。
はい、PCトーカーですが、読むことは読むのですが、全て読まない上にカーソル移動ができません。
おまけに「ボタン」の所を推しても反応しません。つまり、タイムカードが打刻できません。要するに給料なしということでしょうか。

チャットワーク

PCトーカーでも一応操作はできます。ただ、なんとなく動かしづらいなあというのが感想です。
ただ、これは私がNVDAに慣れているせいかもしれません。どうなんでしょうか?

生成AIの「Copilot」

次は生成AIと呼ばれる分野です。これはAIにいろんなことを尋ねるとAIが自分が蓄積しているこれまでの情報などから最適な答えを考えて導き出してくれるというものです。
当初はたいしたことないなという感じでしたが、今ではその技術力・情報量も増えてきたことからかなり高いレベルの答えを出してくれます。
Copilotについてもっと詳しい情報を知りたい方は以下のリンクをどうぞ。
AIアシスタント「Microsoft Copilot」とは
さて、そんなCopilotを体験してみました。実演は松井さんです。
1.windows11のタスクから「Copilot」を選択。
2.トップ画面が出て「なんでも聞いてください」と読み上げるので、内容を入力する。
ちなみに、ここでは「視覚障害者の街あるきアプリは?」と入力しました。
3.すると「文章を生成しています」と読み上げます。もう少し寛容な心で待ってあげましょう。
4.かなり長い文章を生成してくれますが、その生成が終わったら自動で内容を読み上げてくれます。かなり時間がかかります。その間に何か「もう少しお待ちください」とか言えばいいんでしょうが、そんな配慮がありません。
5.生成が終わったら「受診したメッセージ」と読み上げ、そこから内容を読み上げます。
ちなみに、この時の回答としては視覚障害者の街あるきアプリ全体についての説明と、おすすめとして「アイナビ」が紹介されました。
文章の最後には「笑顔」の顔文字まで入って読み上げていたのがなかなか好感を持てます。ちょっと、ふふっと笑っちゃいます。
6.ここで特筆すべきこととしては、この生成した文章の情報元がどこかということを記載してくれています。つまり、「この記事を参考にしました」というリンクが貼ってあるわけです。
ただ、その情報元を開いてもそんな内容が全くないという時もあるそうです。そのため、一応は情報元を自分でチェックすることをおすすめします。
そんな不確かな内容もありますが、この回答の中に自分が知らなかったキーワードなどが出てくるわけですので、そういった新たな知識や発見、新たな謎といったものが生まれることで、そこからさらに調べるべき事柄が見つかります。
それはきっと自分の知識欲、向上心、好奇心を増やしてくれると思います。そういう意味では、どんどん活用して自分の情報収集や学習にとても役立つアプリではないかなと思っています。
また、このようなAI技術はさらに進化するでしょう。本当に人間を超える日が来るかもしれませんね。

”白杖を持った笑顔の男性のイラストです”

まとめ

そのようなわけで、ここまで長々と書いてまいりましたが、結局、言いたいことは

  1. Windows10のサポートが2025年の10月に終わるから、windows11が最初から入っている中古パソコンを購入するこ。
    なお、その際の性能についてはcore i5かi7で記憶装置はSSD、メモリは16GB以上、世代は第8世代以上で探すこと。
    時期としては年度替わりの3月からGW前までで検討。その理由は在庫が抱負なため。
  2. 優先して覚えるべきスクリーンリーダーは、仕事をすると考えるならNVDA
    メールやインターネット閲覧、サピエ図書館でのデイジーCDの利用だけにとどまるならPCトーカーのほうが操作は簡単なので、こちらがおすすめ
  3. windows12が来年に出るが、スクリーンリーダーが対応するかどうかがかなりきわどいので、まだ手を出すべきではない
  4. 生成AIはwindows10でもWindows11でも楽しめるので、いろいろ試してみると面白い
もちろん、本当にこれだけではないにしろ、この内容をよくここまで長々と書いたなと思うと自分でも笑えます。
まあ、いろいろと月例会でやったことプラスその情報元を追加したりしているので仕方ないのですが…。
そのようなわけで、無事に楽しく月例会は終了しました。このあと、すさまじい大雨で雷も鳴っていましたが、
可能な人だけで西鉄福岡駅北改札口コンコースにある『やりうどん』でうどんを食べに行きました。
ちなみに大阪から来られた丹藤さんは福岡のうどんを堪能されたあと、先述しましたとおり沖縄に寄ってから大阪に日帰りで帰られました。
私ももちろんですが、ほかのメンバーもすごく刺激を受けていました。本当に遠路はるばるありがとうございました。また来てくださいね。
そしてほかの参加者さまも、ご参加していただき、ありがとうございました。
そしていつも場所をお貸しいただき、さらに今回は実演までしていただき、本当にありがとうございました。
というわけで、今回の議事録は以上です。長い文章をお読みいただき、ありがとうございました!出村でした!