ノー・リミット 令和6年7月月例会のご報告(議事録)
令和6年7月28日に行いました「ノー・リミット」令和6年7月月例会(第16回)の内容を議事録にしました。
プログラム
- 日時:令和6年7月28日13時から16時まで
- 場所:あいあいセンター中研修室
- 参加者:西 夕子さん、井上駿さん、浜里さん、中村副代表、出村で視覚障害者は5名
ガイドヘルパー・付き添いの方が2名で合計7名。 - プログラム
- 参加者あいさつ(13時から13時20分まで)
- 今月のテーマ:
物が頻繁に迷子になってしまう方たちへ~なくしもの対策委員会~
プログラム詳細
参加者あいさつ
今回は初参加の浜里さんを含めて視覚障害者が5名の参加でした。
このクソ暑い中、ご参加いただきましてありがとうございます。
出村はとにかく汗だくでしたが…。和やかに自己紹介を行いました。
年齢の話が井上さんから飛び出し、最終的には出村が30代と言われて普段から若作りしていてよかったなと感じました。体は悲鳴をあげているんですがね。
今月のテーマ:
物が頻繁に迷子になってしまう方たちへ~なくしもの対策委員会~
さて私の年齢の話は置いといて、今回のテーマは「なくしもの」です。
私は自分で吐き気を催すほどによく物をなくします。自分的にはきちんと「これはここ」としっかりと管理ができていると思っているのですが、
気づいたらというか、いざその物が必要になった時、その物たちはそこにいません。「そこに私はいません」と誰かの曲でありましたが、まさに古コーラスでそのメロディが聞こえてきます。
そしてそれは「ごくまれに」という頻度ではなく下手したら1日1回ぐらいそんな場面に出くわします。出くわしますと書きましたが、原因は間違いなく私なんですがね。
ただ、なくしても、見失っても探せばいいわけです。しかしながら、その「探す」ということが一番厄介な障害、それが私たち視覚障害者なのです。
あくまで私は全盲という立場から申し上げていますが、正直、すぐに思い出すケースもあります。ただそれこそ「ごくまれに」です。
大体が5分から10分、ひどい時には30分以上かけて探して結局見つからずに家族にヘルプを申し出ると
「そこにあるじゃん」
というふうに、わずか0.2秒で発見されるということが本当によくあります。こんな時、私は視覚障害者という現実をまざまざと思い知らされるわけです。
そしてこれは家族がいたからまだいいのです。もし、これが独り暮らしだったら?
仮に家族と同居していたとしても家族が出かけていたら?寝ていたら?運悪くけんかをしていてとても頼みづらい状況だったら?
そう、解決できるのは自分だけということになるのです。
みなさん、どんな工夫をしていますか?
ではここで参加者の皆さんが普段から「なくしもの」についてどんな状況なのか、そしてそれに対してどんな対策を行っているかを聞いてみました。
- 井上さん…
出先でよく物を忘れたりなくしたりすることが多い。そのため、物にはテプラなどに墨字と点字で名前を書いて貼り付けたりする。 - 浜里さん…
福祉用具でタッチボイスというものがあるので、それを申請しようかなと考えている。ただこれはその物が何かを認識する道具なので「なくしもの」に対する対策とは言えない。
また自宅ではご主人がいるので頼ることが多い。また調味料などには輪ゴムをかけて区別ができるようにはしているが、これも「なくしもの」ではなく「識別」になる。 - 西さん…
社員証などは落としてもすぐに分かるように鈴など音が出るものをつける。大事な書類などはカバンの奥深くにしまってほかの物を出す時に落ちないようにしている。 - 出村…
ニモカはリール付きのパスケースに入れて首からぶら下げて物理的に落とさないようにしている。そのほかの大事なもの、よく使う小物には今回のテーマのうちの1つ、「スマホと連動しないタイプのタグ」を複数つけている。
それらをつけていないものはよくなくす。「これはここ」と決めて置いているつもりだけど気づいたらそこにない。記憶ではかなりあいまいな場面が多いと感じる。 - 中村副代表…
定期券などは出村と同じでリールつきのパスケースに入れてベルトにぶら下げている。
スマホについてはスマホケースに入れて首からぶら下げている。これだと急に移動しなくてはいけない時などすぐに出し入れできるから便利。
家の鍵などはカラビナと呼ばれるキーホルダーのような金具に通してひっかけるようなものを使ったりする。
屋外などでは、なるべく自分の持ち物を1つにまとめるようにしている。バッグにくくりつける、何かと一緒にすることでなくしづらくしている。
「音で探せば簡単でしょ?
さてここまでは前置きで、ここからが今月のテーマ本番です。
結局、見失ってもなくしても、結果として「すぐに見つけられる」ことができればいいわけです。
要するに、家の中で「あれがない、これがない」という時間の無駄をなくす、さらには自分が持ってきているはずのものがちゃんと所持できているかの確認、これらの要望を満たせばいいわけです。
結局、視覚障害者の私たちにとって一番有効なものは音です。
そのため、物の所在を音で知らせる、その物の位置を音で認識できればいいわけです。
それができる物こそ、中村副代表と出村が今回用意した品物なのです。
その中でざっくりとですが以下の種類に分けられます。
- スマホと連動させてスマホでその品物の所在について音でさがす
- スマホとは連動せずに音で探す
これらの品物を一般的にキーファインダー、スマートトラッカー、スマートタグ、タグなどと呼んでいます。
その中でもスマホと連動させるタイプをスマートタグ、タグ、スマートトラッカー
スマホと連動させないタイプをキーファインダーと呼んでいることが多いです。ただ、その境界線がはっきりしているわけではなさそうなのがややこしいです。
とどめにアップル純正のものをエアタグ(アップルエアタグ)と言うそうで、さらにややこしいです。いいかげんにしろと心の中では常に叫んでいます。あ、言っちゃった。
まあそれはさておき、まずはスマホと連動させるタイプのものを紹介していきます。
タイルについて
まずは中村副代表が持参した「タイル」と呼ばれるものです。
先ほどの種類の中ではやはりスマートタグ、スマートトラッカーなどに分類されます。タイルというのは商品名ですね。
ちなみにiPhoneでもアンドロイドでも両方使えます。
これは形状がいろいろあり、カードタイプ、キーホルダータイプなど、さがしたい品物によって使い分けられるようになっています。
例えば定期券入れにつけたい時はカードタイプ、鍵などはキーホルダータイプといった感じですね。
基本的な流れとしてはアンドロイドなら「みつける」、iPhoneなら「さがす」アプリと連携させることになります。
今回、中村副代表がアンドロイドを使用していたため、そちらでざっくりと説明しますと、
- タイルをちな物に取り付ける。今回はタイルを家のカギに取り付けたとします。
- 「みつける」アプリを開き、持ち物を登録する
- 登録した項目の名前を分かりやすい名前に変更する。今回で言えば「家の鍵」と変更する。
- スマホから家の鍵を選択して音を鳴らす。
なお、iPhoneでは「さがす」アプリと連携させることになります。
そして音が鳴る範囲ですが、この月例会では私たちがいた中研修室からあいあいセンター逆端の部屋の所までは音が鳴りました。ざっと50メートルはあろうかと思いますが、家の中でそれだけ離れた場所でも音が鳴るのなら十分ですね。
そして、このタイルが優れていることは、逆にタイルからスマホを鳴らすことができるということです。
きっと皆さんもスマホのほうをなくした、どこに置いたかを忘れたということがあると思いますが、そんな時に今回の例で言えば家のカギに取り付けてたタイルのボタンを押せば連携しているスマホのほうを音で呼び出すことができるのです。
これは何気に便利ですね。私はガラケーとスマホで2台持ちなのでお互いの電話番号に電話を刷れば解決するわけですが、誰もが2台持ちとはいきませんので、これはかなり優秀だと思います。
また、今回は実際にどのようなことになるのかを調査できなかったのですが、例えば、外でこの家の鍵落とした時、距離が離れすぎて自分のスマホでは呼び出し範囲が届かない、または分からないような時でも、
このタイルのネットワークという所に登録しておけば、他のタイルユーザーがそのネットワークで場所を検知し、その情報をタイルネットワークに流すことができるそうです。
正直、これについてはどういう仕組みでそうなるのか、記事を読んでもあまりぴんとこなかったので、以下の記事を参考にしていただければと思います。製品情報なども詳しく乗っています。
カギもスマホも、音で探す。スマートタグ「Tile」
エアタグ
続いては出村が持ってきた「エアタグ」と言われるものです。これはいわば純正品がiPhone専用という代物で1つにつき4000円ぐらいします。先ほどのタイルに比べればかなり割高です。
そしてややこしさ爆発なのがアップルのものではない物もエアタグと書いてあることがあり、もう完全に訳が分からない状態です。
なぜなら、出村が持ってきたのが純正品ではないもので、そしてエアタグと呼ばれていた物を購入しているからです。
これは2つで3000円でした。かなり安いです。
ただ、その場合、純正品の機能すべてを使えるかどうかと言うのははっきり言ってその品物次第です。
というのも、純正品ではないものにもいろいろと種類というかメーカーが乱立しています。
その中でそれがエアタグの機能の100パーセントを使えるものなのか、または半分以下ぐらいの機能しか使えないものなのかは、現物がきて、設定してみない限り分からないのです。
いわば、完全に運試しなのです。アマゾンなどの商品ページでは「100パーセントの機能ができる」と大体の商品で書いてあるのですがね…。
ただ、レビューを見る限り、基本的な「さがすアプリと連携させて音で場所を知らせる」
という機能はほぼ保証されているようです。まあ、それができなければ何のために買ったのか本当に分からないわけですからね。
そして、このような書き方をしているということは?
そうです。出村が持ってきたものも100パーセント使えるものではなかったということなのです。
しかしながら、その基本的な部分さえ使えれば十分だと言う考え方ならその純正品でなくてもいいわけですし、
つけたい品物が多すぎるからせめてコストを抑えたいということなら、純正品でなくてもいいんじゃないかなと思います。
それか、先ほどのタイルのほうを使うかでしょうね。私も今度買い替える時はタイルを試してみようかなと思っているほどです。
忘れ物・落とし物防止機能
ただ、純正品にはやはり純正品と言われるべき便利な機能があるわけです。それは何かというと、自分のスマホと、そのスマホと連携させた品物の距離が一定以上離れると教えてくれる機能です。
つまり、これも先ほどと同じように家の鍵で例を挙げると、どこかで先で、普段から家の鍵を持って出歩いているとして、家の鍵をどこかで落とした時、
その落下地点から自分の位置、つまり自分のスマホの位置が一定以上離れた時点でスマホに通知が届くシステムとなっています。
なので、この機能は見つける機能というよりは忘れ物、落とし物防止機能なわけです。
なんて便利な機能なんだろうとわくわくしていましたが、当日までその機能が発揮されることはありませんでした。
実際にそのような設定画面もちゃんとあって、チェックボックスにチェックも容れて、それでもならなかったのです。
これは某協力者の所までヘルプをお願いして、一緒に4時間ぐらいあれやこれや試しましたが、結局、どうにもなりませんでした。
そのため、この月例会ではご紹介に至りませんでした。すごくすごく残念でなりませんでした。
しかしながら、それから数週間が経ったある日、その設定のまま博多駅の職場にわざとタグを置いて帰りましたところ、
「現在、あなたのデバイスと家の鍵が離れました。最終確認地点は博多駅東1丁目で距離は458メートルです」
と読み上げたのです。
おお、すごい!と喜んだ後すぐに気づいたのは
「458メートルううううううううううううううう?
450メートルも離れてから教えてもらっても、それは……どうにもならんやんけええええええええええ!
ということです。ただ安心してください。本家のタグは大体15メートルぐらい離れた時点で教えてくれるそうです。
ですので、最終的に何が言いたいのかというと、
この忘れ物・落とし物防止機能を使いたいなら純正品を
別にこの機能が必要なければ純正品でなくてもいい
という結論になります。
商品の紹介は以下のリンクからどうぞ。
(アップル純正品)…Apple AirTag 4個入り
(非純正品・iPhone専用)…Boscznorp エアタグ(4個セット) の「探す」(iOSのみ対応),紛失防止タグ 超薄(0.5 cm) 電池交換可能 リアルタイムの位置/紛失リマインダー (鍵,バックパック,スーツケース
(非純正品・iPhoneとアンドロイドどちらも対応)【GPS全地球測位&超強力信号です】小型 スマートトラッカー ios&Android共通 小型GPS発信機 電池寿命約3年 電池交換可能 財布忘れ物防止タグ 車両追跡用 簡単で使いやすい
スマホを使わないタイプ「キーファインダー」
そして最後はスマホを使わないタイプです。一般的には「キーファインダー」と呼ばれており、このタイプが一番安く済みます。
仕組みとしては、やはり物につける受信機(タグ)と送信機(リモコン)です。どちらにもボタン電池が使われていることがほとんどで、こちらも無線で探知します。
欠点としては値段が安い分、やはり探知範囲がスマホのタグよりは狭いことです。
ただ、それでも30メートルぐらいは有効なので、家の中、どこかの部屋の中、うまくいけば隣の部屋などでも反応します。
これのいい所はスマホと違って設定が全く必要ないことです。タグとリモコンのどちらにもボタン電池を入れてしまえばそれで終わりなのです。
しかもこのタイプは複数mのタグでセットになっていることがほとんどで、1つのリモコンと4つのタグがセットになっているのがほとんどです。それで大体2000円~3000円ぐらいです。
つまりタグ1つあたり500円程度で済むわけです。安いでしょう?
ちなみに出村はこのタイプを一番初めに購入していて、その当時でリモコン1つに対してタグが6個ついていて2500円というものでした。残念ながら現在では6個ついているものが見つかりません。せちがらい世の中ですね。
あと、もう1つ欠点を述べるとすれば電池切れの心配がスマホのものより増えることです。
どういうことかというと、スマホタイプの場合リモコンにあたるスマホは充電すればいいわけなので、タグの電池切れだけを心配していればよかったわけです。
それに対して、このキーファインダーではリモコンもボタン電池なので、タグの電池切れも困りますが、このリモコンの電池がいつの間にか切れていたとなれば、全てのタグを呼び出せないので、絶望の海にたたきこまれることになります。
ちなみに出村にはこの経験が1回ありまして、その時は財布、バスカード入れ、障碍者手帳、血糖値測定器、インスリンケース、小物入れにつけていたため、その日は財布を見つけることができずに無一文で出かける羽目になりました。それがこのキーファインダーで起こり得る最大の注意ポイントですね。
商品の一例は以下のリンクからどうぞ。
【2024新版】キーファインダー ISTATSO 探し物発見器 忘れ物・落し物探知機 探し物キーホルダー key finder 軽量 薄型 耐衝撃 お年寄り·隠す習性の方·物忘れ易い方向け
おわりに
ここまでが今月の月例会で取り扱った内容です。
やはり私たち視覚障害者は一度なくしたら見つけるまでがかなり大変です。
しかし、今月ご紹介した品物を使うことで、なくしてもすぐ見つけることができるから大丈夫、そんな安心感が私たちの生活に対するストレスをかなり軽減してくれるのではないでしょうか?
確かになくさないことも大事だけど、なくすことに対する恐怖を減らすことも重要です。バランス良く、スマートに日常生活をよりよく過ごしていただければと思います。
それでは今月も長い文章をお読みくださり、ありがとうございました。
現在10月23日午前3時です。今日も仕事なんですけどね…。さあ寝よう寝よう。