盲導犬ユーザー河口さんのご講話・座談会 ※お話しに出てくる個人名、話者については出村・中村・河口さん以外はイニシャルなどで表記しています。 ※「●●」は聞き取りが不明瞭な箇所です。 ※お話を忠実に文字化しているものであり、その当時の状況など、現在の実情と必ずしも一致していないこともありますことをご了承ください。 ※あくまで個人の話であり、「ノー・リミット」全体として主張するものではございません。 ※内容に加え、会の雰囲気等なども知っていただけるように、講話以外の部分も少し記しております。 (00:00:00) 河口:皆さん、こんにちは。河口まきこと言います。盲導犬のユーザーです。現在、3頭目です。一緒にいる相棒は「うらら」と言います。うららとは、ちょうど3年かな? うららさん?ほら? SJ:いつものマットがないからですかね? 河口:いやいや。ハーネスを外してて解放されて、いろいろな人がいるから、気分がもうフリーになってて。すみません。 出村:いやいや、そっちのほうがありがたいです。リラックスしていただいて。 河口:皆さん、視覚障害の方? 出村:はい。 河口:皆さんは中途の方が多いですか? 弱視の方ですか? 出村:弱視の方もいらっしゃいます。 河口:私が弱視で、30歳で出産をした後に網膜剥離、中央部が剥離して、手術をして、その時は片方しか見えてなかったんです。10年経って失明したんですね。3か月間、全く光がない生活をしておりまして、その後に先生が手術を繰り返してくださって、一人で歩けるくらいの視力には回復したんですが、やはり元の視力、同じような見え方には戻りませんでしたが、日常生活はできるぐらいの視力でした。拡大鏡を使うと文字が見えるぐらいでした。その時から2年ぐらいで光がない状態になりました。 ところが、実際には20年ぐらいは見えていたんですよね、じわっと落ちてはきてましたが。ただ、失明した時というのは、手術後にいきなり真っ暗になったので、ショック症状がひどくて、視力がある程度、回復して歩けるようになっても、不安症状というのがものすごく残ってて。 最近、分かったんですが「失感情」と呼ぶそうです。「感情を失う」で「失感情」ですね。だから、喜怒哀楽がないわけです。物事の認識は全部できてるんですけれども、なんか、ぽかんと。 出村:無反応みたいな? 河口:そうなんです。無反応なんです。非常に薄気味の悪い感じで。腹も立たないし、悲しくもないし、うれしくもないという。気持ち悪いなと思ってたんですけど、やはり突然失明する、事故なんかでもそうですが、そういう場合は精神的なトラブルということで、そうなるらしいんですね。じわっと良くなるんじゃないかと言われても、「良くなるのかな? 」と思って平凡に過ごしていました。 その時は仕事をしていたんですが、バスの時間の都合が一番良い時では1時間ぐらいで職場に着くんですが、基本的には片道1時間半ぐらいかかる所だったんです。それで、視力がじわっとだんだん落ちて来て、引っかかったり、ぶつかったりするようになって、「これじゃいかんなあ」って思って。 仕事はマッサージで、機能訓練指導員という肩書なんです。それでデイサービスに行っていたら、みんな高齢者ばかりなんですけど、私が行ってすぐに「おはようございます。皆さん、どうですか? 」って私が本来は言わなくてはいけないんだけどこっちのほうが危ないわけなので、おじいちゃん、おばあちゃんが「あんた、今日は無事に来たね? 」ってみんなから心配されて。「なんとか来たよ」って言って、ひいひい言いながら行ってたんです。その時に、「盲導犬がいたらいいかなあ? 」と思って、盲導犬を申し込んだんです。 最初の子は5年ぐらい待たされはしましたが、貸与していただけました。さっき言った「失感情」という部分を回復させてくれたのは、今になって思えばこの子でした。 というのも、この子が非常に出来が悪い子だったんですね。それで失敗をどんどんやらかすんですよ。次から次にやるし、私も慣れてないものだから、「ろくなやつじゃないな」っていう盲導犬だったんです。 ただ、そのおかげで、腹を立てたり、情けなくなったり、 出村:感情が? 河口:感情が。やっぱり「うれしい」と思ったり、非常に近い状態で感情をやり取りする中で、「ああ、心ってこんなに色があったんだな」って。それまでは、かなりモノトーンな感情だったのですが、それがオレンジとかブルーとかグレーとか、「いろんな色が心にはある」ということを感じさせてくれたのが、最初の、少し出来の悪い盲導犬でした。 出村:最初に、仕事で「ああ、いかんなあ、見えないな」ってなって、いきなり「盲導犬」という手段に行きついたのは、なぜですか? 例えば、歩行訓練を受けて自分で行こうとか。そうではなくて、いきなり「盲導犬」がパッと浮かんで「あ、盲導犬を申し込もう」となったわけですか? 河口:そうですね。失明してから回復した時に、最初に一度、歩行訓練を受けたんですね。ただ、その時は見えていて、それでも「突然、失明することもある」ということで、アイマスクをして訓練を受けてました。日常的には見えているわけですから、アイマスクなどは使っていないわけですが。しかし、その後、視力が少しずつ下がってきたのですが、一度訓練を受けているので、もう受けられないんじゃないかと思っていて。実際に受けたのは20年ぐらい前にはなるんですけど、「一度、受けたからなあ? 」と思っていたわけです。 ただ、その弱視の状態で20年間歩いてきたわけですから、見えなくなってきて、それでも20年も前の訓練の内容など覚えていないわけです。すっかり、きれいさっぱり。 出村:そうですね。時間が経ってますからね? 河口:はい、時間が経っているから。後で聞いたら、そういうふうに弱視の状態で訓練を受けていても、失明した後ではやはり状態が違うので、その場合は訓練をし直すことができると聞きました。聞いた後では「そうだったんだな」と思いますが、その当時は知らなかったのです。 それと、お仕事が密だったので、訓練を受ける余裕がなかったんです。時間的な余裕もないし、子どもたちも家にいたので。 SJ:その当時、お子さんはおいくつだったのですか? 河口:20歳ぐらい? SJ:じゃあ、そこそこ大きい? 河口:そうですね。20歳とか高校生とかぐらいじゃなかったかな? 確か、20歳にはなってなかったと思います。でも、ドラマなんかを見てると、目が見えないお母さんを子どもたちが手伝って家のことをすると言うけど、私の周りの人に聞いたら、「全然、手伝わないよ」って。 SJ:ああ、ないない。 河口:ないよね? でも世間のイメージでは「子どもさんがいるなら、子どもさんが全部してくれるんでしょ? 」っていう。 SJ:ないない。 河口:うちの団地の人にも「トイレはどうしてますか? 」って言われたから、私が「犬のですか? 」って聞いたら、「いや、お宅、あなた」って言うから、「トイレではズボン脱いでパンツ脱いでしますよ? 」って答えたら、「偉いですね? 」ってほめられますからね? だから、世間のイメージというのは、「子どもとかにパンツを脱がせてもらって、トイレをさせてもらってる」というイメージがあるんですかね? (00:10:00) ガイドさん:「やっぱり、健常者の方は「トイレはどうされるんですか? 」ってよく聞かれますね。 河口:そうなんですね? ガイドさん:だから、目が見えなくてもトイレは普通に行かれますよって答えます。 河口:そうですね。 ガイドさん:でも、多いですよ? 河口:そうそう。どう答えていいのかなって思ってね。「ただ、ズボン脱いでパンツ脱いで、トイレに座ってしますよ」って答えたら、「うわあ、すごいですね? 」って。別にそれほどすごいことでもないような気がするけど、そういうイメージの人もいるんですよね。 ガイドさん:そう思われている人、多いみたいですね。 河口:現実はトイレも自分でするし、料理とか3食作るし、それプラス仕事もして、それから訓練もというのは、いくら「可能だ」と言われても、やはり行けなかったと思うんです。 出村:盲導犬を申し込む時って、僕が人から聞いた限りでは、泊まり込んで訓練すると聞いたんですけど、そういうのもその時には? 河口:ありました。ただ、共同訓練に入りますと言っても、犬の準備が整わないんですね。生き物なので、訓練する状態にまでに到達するのが、いつになるかというのが分からないわけです。 SJ:やっぱりどんな犬でもいいというわけではなくて? やっぱりある程度の適性がある犬じゃないと駄目なんでしょ? その盲導犬自体も訓練を受けてから来るわけじゃないですか、河口さんがその共同訓練をする前に。 河口:最初に、盲導犬というのは優秀なパパとママが選ばれて、繁殖をさせるわけですね。発情の時期にお見合いをさせるわけですけど。 SJ:そのパパとママというのは、もともと盲導犬をやっていた犬ですか? 河口:いえ。盲導犬をやっていたわけではなく、繁殖用のパパとママがいるわけです。つまり、小さい時に、「盲導犬になる犬」と「パパ・ママになる犬」というふうに分けるんです。それは血筋です。「この血筋はすごく優秀だ」という子たちが選ばれて、パパとママを選んでお見合いをさせるわけですが、うまくいかないことのほうが多いそうです。結局、パパのほうが「いいですか? 」ってお伺いを立てても、ママのほうが、 SJ:タイプじゃない? 河口:そうそう。「お前なんか、いらんわい!」みたいな感じで。盲導犬になる男の子というのは結構おとなしいから、断られてしまうと、「いいじゃん? 」とは押せずに、しょぼーんとして終わってしまうそうです。 出村:帰るんですね。 河口:だから、人工的に繁殖をさせることもあるみたいですけどね? そのような優秀な子たちから生まれたベビーちゃんが繁殖ボランティアさんの所で3か月ぐらいはおっぱいを飲ませてもらって、親と一緒にいて。 それから、「パピーウォーカーさん」という「犬を預かってくださる方」の所にいて、1歳になったら協会に戻して訓練を始めるんです。訓練は約1年間ぐらいですね。 ただ、その子たち全てが盲導犬になれるかというと、その時々により違いますが、トレーニングについてこれないなどで、盲導犬になれない犬もいっぱいいます。 SJ:これ、例えば申し込みをするじゃないですか? 申し込みをする時に費用というのは発生するんですか? 河口:申し込みには費用はかかりません。 SJ:ない? 河口:ないです。 SJ:じゃあ、その協会に「盲導犬を借り受けたいんですけど」と申し込みをして、タイミングが合えば借りられるという感じ? 河口:そうそう。 SJ:じゃあ、借りるのは無償で借りれるってこと? 河口:はい。無償で貸与してます。そしてカップリングです。つまり、生活環境ですね。 例えば、田舎に住んでいる人と、都会に住んでいる人とでは暮らしが違うので、犬の性質がどこに合っている犬なのかというのもばらばらなのでそれを協会の方が見極める。「この人だったら、この犬が合っているな」というので、環境や生活ペースなどで相性の良い犬を選ぶわけです。 そして、「準備できましたから、訓練を始めましょう」と連絡がくるわけですが、これも突然くるのです。訓練開始1か月前とかにしか連絡がこないんです。しかし、仕事をしていると、1か月前なんかに言われても仕事を休めないんですね。4週間の泊まり込みの共同訓練を受けないといけないので。それで「1か月休みます」と言っても「だめ、だめ、だめ」ということで、最終的には、いったん辞めるということになりました。結局、辞めると次の人を正式に募集できるわけです。1か月休みと言われても、1か月だけ来てくれる人など見つからないわけです。それで、ほかの人を見つけてくれて、私は4週間の共同訓練に入りました。 出村:じゃあ、実際にお仕事を辞めたんですね? 河口:その時はですね。辞めたんですけど、盲導犬を貸与して戻ってきた時に、ちょっと手伝いに来てということでまた呼ばれて、同じ職場に戻ったんですけどね。 出村:それならよかったですよね。 河口:はい。それはとてもありがたいことですね。そんなことになるとは思わなかったんですけど、また行きましたね。 FK:その4週間の共同訓練を受けるじゃないですか? その訓練を受ける場所と、実際に生活する場所というのは別々でもいいんですか? 河口:もちろん。生活はそれぞれの生活があるので、大体3週間ぐらいが共同訓練の場所で、 FK:その後、1週間は自宅で訓練するんですね? それというのも、僕は今仕事をしてるんですけど、これから仕事を辞めて、特別支援学校に行こうかな、どうかなと考え中なんです。その間、1か月まるまる休めるといったら夏休みとかじゃないとできないじゃないですか? 寄宿舎に入りたいなと思っているんですけど、それと僕には自宅があるわけですが、別々じゃないですか? この場合、その1週間は、どこで訓練をするんですか? 出村:寄宿舎と自宅、どっちを選ぶか? FK:そうそう。 河口:そうですね。ただ、支援学校には、どのぐらいいらっしゃる予定で? FK:3年です。 河口:3年? ただ、勉強と盲導犬の世話を両方というのも、なかなか大変らしいんですよね? FK:盲導犬と一緒に寄宿舎で暮らすというのはできないんですかね? 河口:できるみたい。ただ、朝倉の学校がどうかは分からないけど、国立の障害者センターか何か、 出村:今津の? 河口:そう。あそこでは「いました」とは言われたけど、その方はやっぱり大変だったそうです。 FK:そうすると、卒業してからのほうがいいですよね? 河口:そうですね。卒業してからのほうがいいかもしれないですね。 FK:そうすれば、家にいるしね。 河口:そうですね。家のほうが。 出村:それを考えたら、引っ越しとか、どうするんですかね? 引っ越すことになったら? 河口:引っ越すことになったら、やっぱり、歩行訓練をもう一回、フォローアップ、家に来てもらって。3週間の訓練で何をするかといったら、それは「初めての人」が3~4週間なんですね。2頭目の人とかなら10日間から2週間ぐらいなんです。歩き方や犬への指示の出し方、言葉というのもあります。「STOP」とか「GO」とか、右とか左とか、そういう言葉が、その場その場でスムーズに出るようにするのと、「世話」ですね、「ブラッシングをしたりフード・ご飯の食べさせ方とか、シャンプーの仕方、しかり方・ほめ方などもあるんですね。午前と午後に歩いたり、夕食後には座学で「犬の健康を維持するためのこと」、例えば、「食べさせてはいけないもの」とか。 それから、「犬の性質」。例えば犬は「トップになりたい・リーダーになりたい」という「権勢欲」と、「誰かに従いたい」という「服従欲」を強く持っているそうです。そういうバランスがあるということですね。そのようなトレーニングをします。 ただ、基礎的なこと、つまり道をまっすぐに歩く・止まる・左右に曲がるというトレーニングしかできないので、家に帰ってからの状態と全く違うわけです。その人、その人の日常生活・環境によって全然違います。 (00:20:00) ただ、それに対するフォローアップはしていただけます。訓練士さんに家に来てもらって、「ここの場合はこういう指示をする」、「この道の場合は、このように歩いたほうがいいです」ということなどを教えてもらいました。 それから、お互いにコミュニケーションが取れるようになるには3年ぐらいかかると言われています。1年ぐらい一緒にいると、大体は分かってくるんですけど、やっぱり訓練士とは違うので。相手が機械なら指示や命令を出せばそのように動いてくれますが、犬はこちらが「ライト」と言っても、「何? 何か言った? 」みたいに、うまく通じない時もあったりして、お互いにまごまごします。 それが1年経つと、その人の生活環境などから「いつも行く場所」というのもだんだん理解するようになっていきます。私の場合では、よく使うバス停や地下鉄の駅なので、その駅に入る時に「地下鉄の駅だよ」と言い続けていると、1年ぐらい経った時に「地下鉄の駅に行くよ」と伝えたら、スイスイ行くようになるのです。でも、1年経つまでは、「地下鉄の駅」と伝えてもどこか分からないから、ユーザーはまず自分の頭の中に地図を作製しなければなりません。 例えば、最初の道を右、次の道を左」というように記憶します。そして犬に支持を出すのです。犬は曲がり角にさしかかると止まるので、その止まった時に「右」とか「まっすぐ」という指示を出すと、その通りに進んでくれるわけです。 出村:曲がり角で止まってくれるんですね? 河口:止まってくれます。 FK:バスの系統番号とかは、犬は分からないですよね? 河口:分からないです。そのため、今でもあるとは思いますが、盲導犬を貸与していただける条件として、「一人で歩くことができているか」というものがあります。 中村:「一人で歩けている」というのは? 河口:今言われたように、例えば、私はその頃白杖を持てば見えるぐらいの視力だったんですね。それで仕事場までバスで行く時に、バスに乗る時なども行き先や番号などは音声を耳で聞いて確認して乗ります。また、降りた後の横断歩道などでも、車の流れを耳でキャッチして渡りますよね?それができないと、犬は指示どおりにしか行かないので横断歩道でも、「今、青だから渡ります」ということはないんです。 SJ分からないですよね、犬? 出村:ということは、そもそも、基本的に一人で歩行はできるけれども、その歩行の安全性をもっと高めることができるのが盲導犬の役目ということですかね? 河口:そういうこと。 出村:例えば、歩いてる時に人にぶつかったりとか、そういった危険が減らせるという? 河口:そうですね。回避する。ぶつかることが、ほとんどなくなりますね。そして、杖で探る必要もなくなるわけですね。 ただ、杖を使用する歩行と全く違います。杖の歩行というのは、例えば自分が左側にいて左側の段差などがあったら、それを杖で伝っていけば、まっすぐ歩くことはできるけど、犬との歩行の場合、そういうのを使わないから、自分が真ん中を歩いているのか端っこを歩いているのか分かんないわけです。 出村:なるほどね。 河口:だから、今までは自分一人で歩いてた時には、「ここに電信柱がある」と思って杖でたたいて確認して、確認出来たら曲がろうとか思えるけど、犬の場合は電信柱があってもぶつからないから、電信柱を犬がよけているので、電信柱があること自体が分からないのです。 出村:ある意味、全部を委ねているわけですよね? 河口:それでも、「端っこに寄ってね」と言って真ん中に行かないようには伝えるし、これが3年ぐらい経つとほとんど委ねてしまっているので、逆に迷子になりますね。 出村:そもそも、杖って使うんですか? 河口:以前は、杖は使ってはいけないことになってて、杖は置いておかないといけない、手ぶらじゃないといけなかったんだけど、最近ではやっぱり段差が怖い。 出村:ですよね? 河口:段差でワンちゃんは止まるけど、どのぐらいの高さなのかとか分からないことがありますよね? 階段の深さや1段の幅など分からないことが多いわけです。結局、自分が把握している所ならいいけど、知らない所だったら分からないから、それを確認しないと不安だと言う人たちがいるので、最近では杖も犬も両方、慣れてきて自分で判断できるようになったら杖は持たずに犬に任せましょうという。 SG:いつも通るルートだったらね? 河口:そうなんです。自分でも分かってますからね? SG:それだけで分かってますからね? 河口:「もうすぐ階段だな」とか分かってるからね。 FK:横断歩道が赤とか青とかは? 河口:分からないですね。 FK:ただ、いったんは止まる? 河口:止まりますね。 FK:それで、赤か青かは自分で判断しないといけない? 河口:そうです。 出村:ただ、横断歩道を渡る間に横にそれてしまうといった危険は盲導犬によって回避できるけど、赤と青の見分けがクリアできないということだから、そこはやはり自分で判断しなきゃいけないということですね? 河口:そうなんですね。そういう状況なので、「一人で歩行できる」ということが貸与の条件になっているわけです。 FK:これまでに危険とかなかったですか? 河口:横断歩道を渡る時ですか? FK:そうです。赤だったのに渡ろうとしてしまったとか? 河口:それは私自身の問題ですよね? そうですね。車や人が全然通らない交差点というのもあるんですよね。 出村:そっちのほうが分かりづらいですよね? 中村:全然通ってない時のほうがね? どっちに行っていいのかが。 河口:そう。だから、全然分からないんですよね。車や人が通らないかなと思って、結構待つんですけど、全然通らない時には、「いつまでもここで一人で立っていても仕方ないから、行け行け!」と思って行くんですけど、それは赤か青かなんて分からないまま行っていることはあります。 FK:逆に、スクランブル交差点とかのほうが危険なんですね。あれ、車も人も止まってしまうじゃないですか? 縦も横も。 出村:歩車分離というか? FK:そうそう。 出村:「今は歩行者のターンだよ」といって歩行者が縦も横も全部歩いてっていう? FK:そうそう。 出村:でもその場合は、歩行者が全員歩いてるんだから、一緒に歩けばいいんじゃない? 中村:あと、スクランブル交差点なら基本的には音声が鳴ってるから。 SJ:あれでしょ? 信号機のないちょっとした、住宅街とかの四つ角とかの? ああいうのをおっしゃってるんですよね? FK:そうそう。 出村:ん? SJ:信号がなくて、よく住宅街とかにありますよね? 小さい所。そういう所は怖いですよね? どっちからも車が来るじゃないですか? 信号がないから。 河口:そうですね。 FK:最近、電気で動く車とかあるじゃないですか? 出村:あるある。 SJ:でも今はだいぶ。最初の頃の車は音を発さなかったけど、やっぱり事故も多いし、 河口:見えてる人だって怖いって言うもんね? SJ:そう。だから今は、若干、音がするようになってます。エンジン音みたいな、 出村:シューって鳴ってるよね? SJ:うん。シューッて。 中村:確かにシューッと鳴ってるし、それでも完全に止まってる時には静穏にかなり近い状態になってるから、危ないのは危ないんですけど、走行している時には、基本的には音は何らかの形で出るようにはなってますね。 FK:それが一番怖いんですよ。 出村:赤か青か? FK:今でも怖いのにさ? 河口:視力はどのぐらいですか? FK:今は0.03ぐらいです。 河口:そうですか。 FK:片方の目は見えないので、もう片方がそのくらいしか見えないんです。 河口:それは不安ですよね。 FK:それよりもっと悪くなったらさ? 今でも道路に出ていくのが怖いんですよ。通勤の行き帰り、これが一番ストレスになるんですよ。 河口:やっぱりそうなんですよね。 FK:帰ったらぐったりするんですよ。 河口:帰る前に疲れてますもんね? 出村:それでよくベトナムに行ったな? FKベトナムの人は優しい。 河口:最近、学校で盲導犬のお話をする機会があって。若い人で分かってくれている人は、私が横断歩道で立ち止まっていると、「今、青ですよ、大丈夫ですよ、どうぞ」などと声をかけてくれる人もいて、 FK:たまにいますよね。 河口:それを聞いて私も「ありがとう!」と言って。安心して「GO」が言えますから、とても助かっています。 FK:「一緒に渡りますか? 」と言ってくれる人もいるけど、めったにいない。 河口:それが一番不安ですもんね? (00:30:00) FK:そうですね。なんか、濁流の河に飛び込むような感じ? 出村:まあ、そうですね。 FK:めちゃめちゃ怖くて。 河口:そうよね。 出村:成り行きまかせというかね? 「なるようになれ! 」みたいなね? FK:そうそう。 河口:そうですね。やっぱりいきなりまがってくる車なんかドキッとしますね? FK:そういう時に、犬と一緒だったら止めてくれるんですか? 河口:いや、予測できないことはあるからね? FK:車が急に走りだしたりした時。そういうわけでもない? 歩き始めたら、ずっと歩きます? 出村:交差点に差し掛かったら、まず止まるのは間違いないですよね? 河口:段差があるとか、そういう所はね? FK:左折とか右折とか、信号は関係なく、車は進入してくるじゃないですか? 交差点で。そういう時? 出村:例えば、自分が交差点で前の横断歩道を渡ろうとした場合、自分の右側を後ろから車が通過して左折するというケースだよね? FK:そうそう。 出村:そして本来は、車が止まらなくちゃいけないから、 FK:でも止まらないから。西鉄バスは最近止まってるけど。 出村:いや、西鉄バスが止まってなかったら大問題だよ。訴えられるよ。 FK:結局、こっちは止まれないじゃない? 分からないから。 出村:白杖だったらってこと? FK:そう。 出村:急に車がやってきて左折っていう場合で? FK:そう。だから、盲導犬なら止めてくれるのかなと思って。 出村:いや、それはどうだろうね? つまり、犬が車の動きを予測して、「ああ、この車は左折するから、お前ちょっと止まれよ」って? 予測じゃないとしても、その瞬間、犬がこっちの足をパッと押さえてみたいな? FK:そうそう。教えてくれるのかなと。 出村:それはちょっと難しくない? FK:難しいかな? 出村:それはね。多分、ユーザーさんの指示に従うっていうのが前提で動いてるんだろうから。 FK:博多駅とか、あんだけの交通量の激しい道をさ? 出村:いや、だから場所にもよると思うけど、私は博多駅周辺の移動は基本的に地上を使わないもの。できる限り、地下通路を使うよ? SJ:今、うららちゃんで3頭目とおっしゃったじゃないですか? 1頭目から次の2頭目までブランクがあったりするんですか? 河口:基本的には半年あきます。この子の時は代替えで滞りなく代わったんですけど。ただ、犬というのは人間と全く同じで個性があります。1頭1頭で違います。そのため、以前の犬と同じように、分かっているつもりで指示をすると、ものすごく反抗、歯向かってきます。「なんで、あんたにそこまで言われんといかんの? 」みたいな感じで。 出村:「あいつと一緒にするな」ということですよね? 河口:そうそう。「同じじゃない、私は私だ」という感じ。 そして、今言われた「車の判断」、「交通の判断」ですが、これはやはりユーザー側がしないといけないので、歩く時には、かなり緊張しますね。ただ、何年か経つと、「複雑じゃない交差点」とか「ずっと歩道が続いている所」といった「安全な場所」というのがはっきりしてきます。ただ、それでも年に1回か2回ぐらいは、小さい道に入り込んだりして、「ここはどこ? 」となったりすることがあります。 出村:あるんだ? 河口:そう。でもそれはユーザー側が「あ、なんか変な動きをしているな」ということをチェックしていないといけないわけです。 中村:ちょっと言い方が悪いかもしれませんけど、「車の自動運転」と同じような感じなんですね? 結局、自動とは言ってるけど、あれも最終的にはドライバーの判断と責任というふうになってるんですね。 河口:そうですよね。 中村:それと同じように、あくまで盲導犬を使っているユーザーの判断と責任が一番ということになるんでしょうかね? 河口:大きいですよね。 中村:「なんでもかんでも盲導犬に委ねる」というわけではないんですよね? 河口:はい。「盲導犬ができること」というのは「人や物にぶつからない」ということ。ただ、それより賢いなと思うのが、低めの看板があった時などに、犬は背が低いから入れるんですが、人間は必ずぶつかってしまうという時、「あ、これはユーザーさんの高さならぶつかってしまうな」と思うのか、そういう時はよけてくれます。 中村:そこまで判断するんですか? 河口:はい、そこはしてくれます。 出村:それなら、さっきFKさんが言ったことに近いよね? 犬が教えてくれるっていう。「出村だから、ぶつかってもいいか? 」とはならないんですね? 河口:そんなことはないです。ただ、3年ぐらいが経過すると「倦怠期」といって、だんだん険悪な雰囲気になる時があるんです。要するに、お互いが慣れてくるわけです。 例えば、ユーザーのほめ方です。まず、コミュニケーションで一番大事なのは「ほめる」ことです。何かを頼んでそれができた時に「グッド! グッド! グッド! 」とほめるのが大事なんです。 しかし、それが3年も経ってくると、いつもと同じことに対して、例えば、自分の家族にごはんを作ってあげても全く感謝しないのと同じ、「作って当たり前」という感じになるんですね。だから、私が犬と歩いてても、できても当たり前、安全に地下鉄にたどり着いても当たり前と思ってるから、ほめないわけです。最初の1年ぐらいは「よし!できたできた!」とほめてたのが、それを言わなくなるとだんだんギスギスした感じになるんです。 出村:へえ。 河口:そうなっていって。なんとなくお互いに。 中村:なんか犬のほうも態度が? 河口:「なんか、このごろ、相性が悪いよね? 」みたいな。そして、失敗もたくさんあります。テレビなどで盲導犬の番組を見ていると、「ああ、お利口さんだなあ、でもそんなところしか映さないんだな」って。世間ではそういう良いイメージがありますが、実際に私の場合、最初の子はとんでもなかったです。 八百屋さんに行った時に、なんかズズッ、ズズッと引きずるような音がするので犬の口の所を触ったらなんかフサフサ、葉っぱがあるんですよ。 中村:八百屋に陳列している野菜をくわえてたということですか? 河口:そう。ズルズル音がするから、「何だろう? 」と思って振り返るとでっかい大根が後ろからついてきているわけです。「あんた、これ、いかんやろ? 万引きやん」ってすぐ戻って、「お金払います」って言ったら「よかよか、あげる」って言ってくれたり。 SG:訓練を受けていても、そういうことがあるんですね? 河口:やっぱりあるんですね。そして家に帰ったらうちの息子が「お前、取ってきたんか? 偉かったな? 」ってほめるから。 出村:また、ほめるから? 河口:ほめるから、また。 出村:「あそこは家ぐるみでやらせてる」とか言われて。 河口:そうそう。そんな失敗というのはたくさんあります。 また、ドキッとしたのは、今でもしてあるのか分からないのですが、昔は「GGo Chair」って言って空席を探させることができていました。つまり、「GGo Chair」と犬に言うと、犬が空いている席を探して、そこにあごを乗っけて「ここ空いてるよ? 」と教えてくれて、それに対して私も実際に触って「空いてるね? グッド!」という流れで、バスや地下鉄で空いた席を探すということを昔は教えていたんです。 出村:それはすごいですね。 河口:すごいですよね。ただ、一度、私が地下鉄に乗った時、その時の盲導犬が席探しがとても好きな犬だったんです。 そして、いつものように、「ここ空いてるよ? 」とあごを乗っけたので、私が手を出そうとすると、その時はガイドさんも一緒にいたのですが、「ダメ! 犬をひいてください」と言うので、「何だろう? 」と思って、「No!」と言って犬を引っ張ったら、そこには大学生のお兄さんが座っていたのですが、大股開きで座っていたので、ちょうど股間の所に空間があったわけですね。犬からしたら、そこは空間ですから。その時の犬は黒い犬だったので、その大学生の子はスマホをしていたのですが、突如、自分の股間に黒い物体が現れたわけですから、もう飛び上がって驚いていて、その後もずっと胸の所に手をあててドキドキされていたみたいで。 (00:40:00) 出村:その光景を想像したら、すごい状況だな。 河口:なので、こんな失敗をするなら、人の多い時にはちょっと控えようかなと。でも、結局、人が少ないかどうかが分からない時もあるんですよね。そのため、自分的には人が少ないと思って「GGo Chair」をやると、また人の股の間に犬の頭が乗っかり、下手すると私が座るみたいなことも起こったりするといけないので、難しいですよね。 出村:」ただ、横座りの電車ならそんなことも起こるけど、バスとかならね? ほとんどが縦なので、それよりは起こりづらいですかね? 河口:そうですよね。 出村:やっぱり私たちは空いた席を探すのが難しいわけですからね? 声をかけていただければいいわけだけど、実際は毎回そうならないし、そんな時はあきらめて立ってようかなと思って手すりを持ってずっと立って、そのまま降りる所まで行ったりする時もありますしね? 河口:ありますよね。 出村:それを考えれば、その「GGo Chair」はいいですよね? 河口:私の場合は、人が少なそうだなと思った時は「空席はありませんか? 」と言うんですね。人がたくさんいるような時に言うと「譲ってくれ」と言っているような感じで。 出村:そうですよね? 気まずいですよね? 河口:すごくご高齢の方が立ち上がって「どうぞ」と譲ってくれたりすると、 出村:本当に申し訳ない気持ちになりますよね? 河口:「いや、そんなつもりで言ったのではありません」ってなるんですよね。なので、がらんとしてたら、「空席ありますか? 」と尋ねたら教えてくださることもあるし、運転手さんが「全部空いてるので、好きな所に座ってください」ということもあったりします。 SJ:盲導犬と外出してて、嫌な目に遭ったということは何かありますか? 河口:バスに乗っている時に、居合わせた人が「私、犬は嫌いなのよ」というのはありますね。私の知り合いの人は運転手さんに「犬は駄目ですから、降りてください」と言われて。それで、「盲導犬です」と伝えても、「犬は乗せない、あなただけだよ」なんて言われて。 SJ:でも、盲導犬のお仕事中という時があるじゃないですか?「盲導犬のお仕事中です」と書いてあるのをつけているのをうちのバス停で、たまに見かけたりするんですけど、ああいうのをつけて乗ったとしても、そういうふうにおっしゃる方がいるんですか? 河口:その人が福岡じゃなくて田舎のほうなので、盲導犬の認識というのがなかったのかもしれませんけどね。そして、飲食店で断られるというのは、たまにありますね。 SJ:ありますか? 河口:たまにね? やっぱり知らない方もいらっしゃるので、盲導犬の認識がない場合もあるので。そういう時は、「盲導犬なので、本当は法的に断れないんですよ? 」という一言だけお伝えしてます。そうじゃないと、また誰か別の人に訴えられて、そのお店の評判が下がっても馬鹿らしいでしょうからね。 中村:今回のお話を聞かせていただくということで、今日は時間の関係でできなかったんですけど、お茶でもご一緒できたらと思って事前にお店を何軒かまわったんですけど、やっぱり、その中でも「できない」と言われるお店が結構ありましたね。逆に、大手のお店のほうが「いいですよ」と言ってくれましたね。 河口:ファミレスなんかは、わりといいですね。 中村:そうですね。 河口:あと、コンビニも、本当はいいはずなんですけど、それでも断られたことは何度かあります。 中村:コンビニがですか? 河口:はい。 出村:その話は僕も結構聞きますね。結局、オーナーの考え方次第といった感じで。 中村:まあ、フランチャイズでやってる所があるから。 河口:あと、従業員でも知らない方というのもいらっしゃるのでね。 出村:そうですね。 SJ:「白杖=視覚障害者」ということすら知らない人たちもいるから。あと、今って、皆さん、スマホの画面を見ながら歩いている方が多いじゃないですか? そうなると、点字ブロックの上を健常者が歩いていることが多いんですよ。 河口:ありますよね。あそこで立ち話してるとか。 FK:わざと白杖を突き付けてやります。 出村:僕も大体、基本的にぶつかります。わざとぶつかるわけじゃないけど。 SJ:それでも、当たったりケガさせたりしたら、こっちのアレでしょう? SG:僕もおばあちゃんをひっくり返したことがあるから、それが怖いんですよ。知らずに、おばあちゃんが杖にひっかかってね。 出村:だから、僕たち自身は早く歩くことができたとしても、そういうことを考えて、やっぱりゆっくり歩いたほうが安全ですね。 SJ:河口さん、盲導犬を毎月、飼育するというか、そういう時の費用って助成金とか、そういうのありますか? 河口:助成金はないんじゃないかな? フードはまず、自分で出します。それと、ワンちゃんは毎月1度、定期検診があるので獣医さんに診てもらうんですね。耳の状態とか、爪を切ったり、そういった定期検診に乗っかかる費用が獣医さんによって違うんです。大体、3000円~4000円取る所が多いですね。 SJ:それも河口さんの負担になる? 河口:負担になります。 FK:なんか、福岡市って助成があるって聞いたんですけど。 河口:お薬なんかも、フィラリアとか、毎月しなくちゃいけないお薬があるんです。そういうのは助成があるので、無料でしてくださってます。 FK:狂犬病とかもですか? 河口:狂犬病は有料です。ただ、ワクチンなんかは助成で無料になってます。 SG:狂犬病って盲導犬だからって関係ない? FK:関係ない、関係ない。 河口:はい。 FK:1年に1回は受けるよね。 SG:どっちにしても受けるんですね? 河口:はい。そういうのは自分で負担しないといけませんね。あと、トイレはご存じですか? 盲導犬のトイレって。 FK:「ONE TWO(ワン・ツー)」ですね? 河口:あ、知ってます? FK:「ONE TWO」。 中村:場所が限られているというのは知ってますが。「あいあいセンター」とか、博多駅とか。 河口:トイレがですね。 FK:ワンがおしっこで、ツーがうんち。 SG:それは知らなかった。 FK:知らなかったでしょ? ワンがおしっこで、ツーがうんちですよね? 河口:そうそう。 FK:ほら。これぐらい知らないとダメですよ? SJ:時間がきたら、お外でもお手洗いに連れて行かれるじゃないですか? お尻にビニールを。 河口:そうそう。お尻にビニールを取り付けて、そのビニールの中にポリマーが入ってるんですね。それで先ほどの「ワンツー、ワンツー」と言うと、ぐるぐる回って、おしっこをその中でジャーっとすると、おしっこはポリマーで固まるんですね。うんちはビニールの中でポトポト固まるので、ベルトを外して。それで、湿布の袋があるじゃないですか? あの湿布の空袋を人にもらってて、その袋の中に今の排泄したものを入れてチャックを閉めて持ち帰って捨てるんです。あれが、ピチッと封ができるので。 SJ:それは、家にいる時、例えば、もう、今日は外に出ないで家にいるといった時は、ワンちゃんは家の中の決まったスペースでお手洗いとかをするんですか? 河口:うちはビルの9階なので、ベランダで同じようにビニール袋をつけるんですけど、ポリマーは入れずにそのまま出してもらって、トイレに持っていって流します。 SJ:じゃあ、家でもお尻にビニール袋をつけて、させるってことですね? 河口:大体、今はそんなんじゃないのかなと思います。 出村:習慣づけるという意味ですかね? 外でも中でも同じ環境というか。 河口:そうですね。これはトレーニングしないとですね。やっぱり、お尻にビニールを取り付けてトイレをするというのは違和感があるので、ワンちゃんとしても、なかなか出したがらないんですね。 SG:家でずっとおむつをつけるのと同じ? 河口:そうですね。でも、やり続けてると、そんなに抵抗がないようでね。 SJ:じゃあ、外と中であまり環境を変えないようにしてるんですね? 河口:そうですね。 出村:じゃあ逆に、「ビニールをつけてない時にはトイレをしてはダメだよ」というふうに教えてるということですかね? 河口:いや、それはダメではないです。 出村:ではない? 河口:時々、ビニール袋が面倒くさい時は公園の中とか。おしっこだったら、このぐるぐるも何もなしでさせると、ちゃんと出します。おしっこだったら、そこにお水をかけたりして、うんちだったら拾っていきます。 FK:拾うのって見えます? 河口:いや。うんちをする時は、止まってお尻を上げて「うーん」と頑張っているんですね。なので、その様子を感じたら、その方向に足のつま先を向けておくんですよ。そして、手にビニール袋を持った状態で「あのあたりだな」と目星をつけておくんですね。そして、ビニール袋で手前のほうから探っていって、そうするとコロコロしたものが転がっているので、その周辺をそうやって拾っていくわけです。 (00:50:00) そして、めったにはないんですけど、たまに「おもらし」というのもあります。人間の子どもと同じで、大概はできているんですけど、その中でも、「え? ここで? 」と驚いたのは、交差点のど真ん中でうんちをしたことですね。「もう、勘弁して! ここじゃなくてもよかろうもん! どこか別の場所でして! 」って。 SG:交差点の途中? 中村:せめて渡ってから。 河口:そうそう。「ここかよ!? 」と思って。車が少ない所だったんですけど、それでもビニール袋を持って拾っていて「ああ、今、車が来たら死ぬよねえ? 」って思いながら拾ってました。 SG:それは、ワンちゃんが、もう我慢できなかったということですか? 河口:そうでしょうね。 FK:こないだ、糸島の訓練所での体験会に行ってきたんですけど、その時の犬もそんな感じでしたね。なんか、歩き方がおかしいんですよ。だから、「うんち、したいんやろな? 」という雰囲気があって。 河口:それが分かるのは、すごい。 FK:それは僕が分かったわけじゃなくて。 河口:ああ、そうか。 FK:一緒にいた訓練士さんが。 出村:「あいつ、歩き方がおかしいな? 」みたいな? FK:そうそう。 河口:その雰囲気をつかむまでが、最初はやっぱり分からなくてですね。何を言いたいのかとか。ハーネスと、リードを持っているこの手にかかってくる様子で犬の動きを確認するんですね。やっぱり、最初は分からないんですけれども、それが1年、2年と一緒に暮らして、動いているうちに、「今、そわそわしているんだな」とか「よそ見してるよね」ということが分かってくるようになるんです。 SG:よそ見してるとか分かるんだ? 河口:そうなんです。そういう時には集中させるように、最初の1年は特に集中させるようにしていました。 また、「盲導犬は仕事中なので声をかけないでください」ということを世の中に対しては発信し続けてはいるんですけど、それでもやっぱり、そのことを知らずに、「おーい、おーい、こっち来い、ワンちゃん」って声をかけてこられる方がおられますね。 中村:「こっち来い」って。 河口:「こっち来い」とか、 ガイドさん:触る人も多いですよね? 河口:そう。「こっちおいで」とか言う人もいるのでね。最初の3年ぐらいは、そういうことを言われても知らん顔をしていました。つまり、「初心者・初心犬」という状態だったので、そのようなことを言われたら「どうしたらいいとかいな? 」となるわけですね。 中村:誰に従ったらいいのかが分からないわけですね? 河口:形がはっきりできてないわけですね。そういう時の動きをキャッチするのがハーネスとリードなんです。この按配でキャッチするんですね。 ガイドさん:伝わり方が違うんですね? 河口:そうですね。 SG:ワンちゃんは、声での判別とかはできるんですか?飼い主が「GO」とか「STOP」とか言ったらもちろん従うんでしょうけど、飼い主じゃない人がハーネスを持って「GO」とか「STOP」と言っても同じように反応するんですか? 河口:「しない」と言う人もいるけど、大概、するみたいですよ。 SG:ああ、そうなんですね? そしたら、誰がハーネスを持っても、基本的には同じようになる感じですか? 河口:そうですね、素直な子はね? 素直じゃない子は、きっと、「なんで、あなたの言うことを聞かないといかんの? 」って。盲導犬の素質として「不服従」というものがあるらしいのですね。 普通の犬というのはちゃんとした主従関係が築けていると、飼い主さんが命令をして聞くというふうになってるけど、盲導犬の場合はそれではいけないらしいんですね。「ここは危ない」という時にはどんなに「GO」と言われても動かない、「言うことは聞きません」という不服従の素質も必要なんですね。 SG:例えば、信号で待っている時などに子供がふざけて「GO」なんて言ったりしちゃったりすると? 河口:それは聞きません。ユーザーがその場にいる時はユーザーの言うことしか聞かないと思います。 SG:なるほどね。 河口:ただ、ユーザーが誰かに「誰々さん、ハーネス持ってて」と預けた時に「GO」と言ったら、ハーネスを持ってる人の言うことを聞きます。 出村:「持っている人」なんだね。 SG:なるほど。 FK:だから、僕がこの間、訓練所に行った時に僕の言うことを聞いたのは、そういうことなんですね。 河口:そう。ハーネスを持ってるからね。 FK:そうそう。 中村:体験会とかをやっている時なんかでも、結構、聞いてくれますからね。それで聞かなかったら全然、体験にならない。 河口:そうですね。でも、いつだったか、そういうチャリティの盲導犬のイベントがあって、訓練士の方がステージで皆さんにいろいろと、「PR犬」という宣伝用のワンちゃんと一緒にしてたんです。 それで、いろいろとしてたんですが、その時に盲導犬が何頭もいたので、訓練士の方が「SIT」と言った瞬間、みんな座っちゃったんです。やっぱり、言ったのが訓練士だから、それまでだらけていた犬とかもシャキッと走り出しちゃったりして。 出村:そういうことになるんですね? 河口:そうそう、「やっぱり、訓練士の言うことは聞くんだな」と思って。「やっぱり、訓練士さんの威力はすごいねえ」と言うユーザーさんもいたりしました。 SJ:かわいい。 河口:私から皆さんに質問してもいいですか? 皆さんが盲導犬に対して面白そうだなという関心もあるとは思うんですが、逆に「盲導犬は別にいいかな? 」、「一緒に生活しなくていいかな」と思うような、 出村:躊躇する理由みたいな? 河口:そう。どんなのがあるのかなと思って。 出村:そうですね? 中村:基本的には、やっぱり生き物を預かるというのが、ちょっと世話が難しいのかなというのは、個人的にはありますね。環境を整えないといけないというところから始めないといけない。 河口:そうですね。歩く時だけではなくて、生活自体が一緒ですからね。 中村:あと、こういう言い方はちょっと失礼にあたるかもしれないけど、やっぱり連れて行ける場所が限られてしまう場合がある。さっきのお店の話もそうですけど、断られたりとか。 あと、職場とかでは掛け合っていないから分かんないですけど、例えば、職場でも盲導犬がOKなのか? 河口:そうですね。制限がかかるというのはね。 中村:本当は、さっき言われたように、お店とかは断ってはいけないんだろうけど、例えば、「ペットと盲導犬を同一視してしまう人」ですね。お店としては受け入れてもいいと思っているかもしれないけど、ほかのお客さんが「なんで、あの犬が入っているのに、うちのワンちゃんはダメなんだ? 」とか、そういうことを言われるのが面倒だから断るようにしてるという場合もあるだろうし。それは法で認められているんだから、本当はいけないんだろうけど、やっぱり、そんなところが、実際のところで難しいだろうなと。 河口:それは確かにありますね。 SJ世間の認識不足もありますよね? 出村:それで言うと、飲食店でも店員さんと経営者だけ知っていればいいというわけでもないですよね? SJ:やっぱり個人が、 河口:私は仕事でマッサージをしてたんですけど、以前に勤めていた所が閉所になったので、次の職場を見つけるためにハローワークに行ったんです。そして、ハローワークさんが探してくださるんですけど、どこもが「盲導犬がいるならダメだ」と言うんです。 出村:やっぱり、そうなんだ。 河口:ハローワークの担当の方が怒って、「おかしいじゃないですか? 社会参加するために盲導犬がいるのに、盲導犬がいるからダメだ、就職ができないってなったら、それじゃ何のための盲導犬なのか分からないじゃないですか」って。そうやって何回も何回も「盲導犬がいるならダメ」って断られていたんです。 しかし、ある日、そのハローワークの担当者の方から電話があって、「河口さん、今、気の弱そうな経営者の方が来てるから、これは押したらその勢いでなんとかなるかも。会ってみませんか? 会うだけでもなんとか段取りしますので」って言われたから、お願いしますって言って、それから白衣を着てやる気満々で行って見たら、やっぱりおとなしいお兄ちゃんだったんです。「盲導犬はですねえ、僕、知らないんですよね」って言われたけど、まあまあと言いながら、一緒に施設に行って。それで、マッサージしてくださいと言われたので、治療ベッドの下に犬を置いて。そしたら、犬がおとなしいので、「全然、なんにも問題がないんですね? 」って。それこそ、本物の盲導犬を見たことがないのでね。「ああ、これだけおとなしかったら問題ないですね」ということで、そこに就職が決まったんです。 出村:そのハローワークの人が、すごいですよね? 河口:そう。そのハローワークの方には私もすごく感謝してます。その人もよっぽど腹が立ってたみたいで。結局、紹介しようとしても「盲導犬がいます」ということで、「じゃあダメです」と断られて。 (01:00:00) 中村:「盲導犬がいて、なんでダメなんですか? 」ということですよね? 「なぜ、盲導犬がいると断るんですか? 」ということですよね? そこを突いていかないと。 河口:そう。「でも、うちはそういう対応をしたことがないから」とかですね。 また、ホテルに泊まる時なども、「盲導犬は、ちょっと困ります」と、対応したことがないから断るんですね。時々、「対応したことがないから、何が必要か教えてください」と言ってくれるホテルもあります。対応したことがないのがほとんどだと思うけれども。 出村:そもそも、「対応すること」って、別にね? 基本的に、こっちで勝手にするっていう話ですもんね? 河口:ないですよ。なんにもない。 出村:ただ、同じ部屋に入れて、一緒に泊めてくれっていうだけの話でね? 河口:そう。向こうはそれが分からないから、「何か特別なことをしなきゃいけないのかな」と思ってるのかもしれないんですね。 ただ、最初からそうやって断って、面倒だから断るのではなくて、先ほども言ったように、「じゃ、何か特別なサポートが必要ですか? 」と聞いてくれる所があるわけですが、そこで「いや、特にありませんが、こういうことを教えてください」とか、「部屋への経路などを覚えたいので教えてください」と言うと、教えてくれるところもあるんですね。 また、沖縄まで船で24時間、ワンちゃんと一緒に乗ったことがありますが、その時は面白かったですね。2人きり、2人と言っても犬と私ですが、やっぱり船はいいですよ? 船の中はみんな暇なんですよ、24時間も乗っているから、することがないんですよ。だから、こちらが何を頼んでも、めちゃくちゃ丁寧に教えてくれるんです。 中村:周りの景色もみんな海ばかりだから? 河口:そう、暇なの。海しかないからね。 FK:犬は船に酔いませんか? 河口:心配したんですけどね。ゲーって言うんじゃないかなと思ったんですけど、その子は大丈夫でしたね。部屋の中にベッドがありましたが、「さすがに、ベッドに寝せるわけにはいかんだろう」と思って、シートを床に敷いて寝せてたら、船が傾くからズズズズっと滑っていくんですね。そして反対側に傾くと、今度はまたズズズっと戻ってくるんですよ、波と一緒に。それがやっぱり気持ち悪かったらしくて、「もう、たまらん! 」と思ったのか、途中でベッドに上がってきたので、コートを敷いて、その上に寝せて。 TN:飛行機は、どうですか? 河口:飛行機は私が怖くて乗れないんですが、皆さんは乗られてますね。 FK:それは一緒に乗れるんですか? 河口:はい。足元に。 FK:それは絶対に乗れるはずです。 SJ:でも、白杖を持って飛行機に乗る時に金属探知機を通るじゃないですか? そしたら、白杖を取り上げられて。 出村:数歩だけ歩いてくださいって言われますよね? SJ:そう。その時に渡されるのが、腰が痛い人が持つような杖を渡されて。「いや、白杖の意味、分かってるの? 」って。「そんなの届かないやん? 短いやん? 」といった「え? 」というところも。 FK:この間、利用したばかりですけど、その時は手で誘導してくれましたよ? 出村:そうですよね? FK:こんな感じ。こんな感じ、初めてやんと思って。肩を貸してくれるとかなら、よくあるけど。 SG:両手で? FK:そうそう、両手で。 SJ:社交ダンスみたいにね? されるように、手をそうやってされる方とかも。 出村:普通でいいのにね。 FK:もしかして、相手が韓国人だったからかな? 韓国では、そうするのかな? 出村:国によって対応が違うと? FK:違うのかも。 出村:違うのかもしれないですね。それと飛行機会社の。 河口:昔は、目が見えない人を車いすで運んでましたもんね? 出村:そうですね。 河口:だから、連れて行くと危ないと思われるのか、「障害者は一緒」みたいに思っている方いますもんね。 ガイドさん:高齢者の人と同じように手を出してする人多いですよ。 河口:そうですね。ただ、盲導犬が一緒にいると両手が空かないからそういう意味では。 また、以前に白杖で歩いていた時と、盲導犬で歩いている時の世の中の人たちの対応は全く違います。 SG:どう違いますか? 河口:盲導犬を持っている人のほうが一人前の人として扱われます。変な話だけど分かる? 「ちゃんとした」人なのよ。 ガイドさん:分かります。だって、目が見えないというだけで、みんな、ものすごい扱いをしますもの。 河口:そう。盲導犬がいないで一人で歩いていると、「なんか、大丈夫か? この人」みたいなね。年寄りや赤ちゃんを扱うような。 SG:ああ、それはある。 河口:そういう扱いをされてたけど、盲導犬が一緒にいて、そういう扱いをされたことはないですね。「普通の人で、目が見えないんだ」という感じで。 また、出かける時も違います。まず、見えていて一人で行く時は、人に何かを尋ねる必要もほとんどないわけです。「どこですか? 」などと聞いたとしても、「あっちです」と答えられても分かります。しかし、見えなくなったら「あっちですよ」などと言われてもその、「あっち」が分からないわけです。 FK:よくありますよね。「あっちって、どっちやねん」みたいな。 河口:そう。あっちって言われても分からない。だから、そういう意味でも、見えなくなったら今までよりももっと深く聞かないといけないわけです。 盲導犬と一緒にいて私が一番うれしいなと感じることは、自由に散歩ができることです。つまり、「今日、外に出たいな」と思った時に、ぷらっと外に出れるのがうれしいんですね。 ある時、外に出たら風が気持ちよかったので、そのまま地下鉄の駅まで行ったんです。すると、気分も地下鉄気分になったので、「カードもあるから、乗るか」と思って、そのまま博多駅まで行ったんです。 ただ、降りてみてよくよく考えたら、博多駅の様子が今までとかなり変わっていて、現在の様子が全く分からないわけです。 それで、そこから歩けないけど、「どうしようかな、あそこのお店にも行きたいしな」と思いながら止まってたら、「どうされましたか? 」と声をかけてくださる方がいて。そこで、「ちょっと買い物をしたいんだけど、昔と様子が変わっていて分からないんです。あなた、忙しいですか? 」と尋ねたら、「私はもう暇で暇で。定年退職してからすることがなくて、寂しくて博多駅に出てきただけで、めちゃくちゃ暇なんです」と言ってくださったので、「よかった。こういう所に行きたいんですよ」と言うと、「じゃあ、一緒に行きましょう」となって。そういうことが何回もありました。こんな感じで、出たいと思ったら、ぷらっと外に出れるわけです。 ただ、これは白杖の場合でも同じことができるはずなんだけどね? 当時、まだ少し見えていた時でもね? でも、そもそもがそんな気分にならなかった、やっぱり不安があったんだと思うんですね。 だけど、犬がいると心強い。迷子になっても「どうにかなるやろ? 」という、「相棒がいる」ということで、自分の気持ち的にも違うし、また、対応してくださる方々の対応の仕方も違うんですよね。 だから、「出会いの形が違う」と言うんですかね。「出会いって、こういうことなんだな」と感じるんです。何か手伝ってもらうことを通していろいろな会話をするわけですね。そもそも、「目が見えない人をどうサポートしていいか分からない」という緊張感があるみたいなんですね。 でも、犬がいると、犬を介して、一つのクッションになって、打ち解けた話がいろいろと出てくるんですね。 (01:10:00) それは世界的にも同じです。世界盲導犬協会というのがあるらしくて、オーストラリアかニュージーランドの方がみえていて、その話をしたら、「それは世界のユーザーさんの誰もが感じることだよ」と言っていましたね。 FK:僕が盲導犬を連れてベトナムに行けばいいんだね。 出村:またベトナムに行くんですか? 河口:ベトナム? 出村:そう。この前、一人でベトナムに行ってるんです。 河口:なんでベトナムだったんですか? FK:日本にいるベトナムの人にすごく親切にしてもらったので、「ベトナムに行って見よう」と思って行ったら、やっぱり良い国でしたね。 河口:そうでしたか? 出村:しかも、頼った先は知らない人でしたよね? 河口:ええ? FK:ベトナムでは白杖が要りませんから。どれだけ親切にしてくれるかが分かりますよ。 河口:そう? 次から次に、いろんな人に? FK:そうです、そうです。 河口:盲導犬がいても、そういう感じなんです。知らない所に行こうとしても。昔は福岡から沖縄まで行く船があったんですけど、今は鹿児島まで行かないと、船がないんですよ。たぶん、今もそうだと思うんですけどね。 それで、鹿児島まで行くのにも、高速バスに乗るまではガイドさんと一緒だったんですね、載せてもらうのに。どこだったかな? 博多駅か天神か。その後は運転手さんに。トイレに行くのも運転手さんや、ほかのお客さんにお願いして。休憩所で私やワンちゃんのトイレをお願いして。 それでバスを降りて、今度は港までのバスに乗る時もやっぱり誰かに教えてもらって。結局、道が全然分かんないから犬に指示ができないんですよね。船に乗る時も受付まで誰かに連れて行ってもらって、そこからまた次の人に船に乗せてもらってという感じでした。 FK:どうやったらスムーズに利用できるようになりますか? SJ:待ってる人がいっぱいいらっしゃるんでしょ? FK:それよりも、家族の理解。 出村:家族と一緒に住んでる人が「自分は盲導犬を飼いたいんだ」と言った時に、家族から反対されるってこと? FK:そうそう。 出村:そうか。 FK:別に、僕は押し切るつもりだけど。 出村:まあねえ。実際、ペットを飼うという意味合いではないからね? SG:マンションとかじゃなくて、一軒家とかだったらまだいいでしょうけど。 FK:良い条件としては、ペットを3頭飼った経験はあるんですよね。秋田犬と雑種が2頭。でも、それも家族だったから、それが盲導犬に代わっただけという話にはできるけどね。 河口:そうですね。 SG:たぶん、今、皆さんはまだ白杖で歩いているんですけど、盲導犬のほうがいいのか、白杖のままがいいのかというのを天秤にかけた時に、「どっちがいいのか? 」ということが、まだはっきりと分からないことが多いと思うんですね。 河口:そうですね。 SG:盲導犬を持つことによってのメリットもあるし、デメリットもあるし、白杖でもメリットやデメリットがあるし、「どっちがいいんだろう? 」と、やっぱりモヤモヤっとしているものが多いと思うんですね。でも、今のお話を聞いた限り、盲導犬を持つほうが圧倒的に良いというような。 出村:道中の安全については、やっぱり絶対に盲導犬のほうがいいんですよ。でも、やっぱり心配なのは、さっき言ったように、知らない人が。例えば、僕が一人で信号待ちとかしている時に、もし犬にいたずらをされていたとしても、僕はそれが分からない、分かり得ないから、知らないうちにワンちゃんがやられているんじゃないかということが怖いんですよ。 河口:ああ。 出村:僕一人だったら、僕一人が受けるんだったら全然いいじゃないですか? まあ良くはないけど。だけど、ワンちゃんと一緒にいて、僕が知らないうちにワンちゃんがって話なんです。 SJ:今まで、そういうことはなかったですか? 河口:なんか、事件がありましたね?前にね? 出村:そうでしょう? FK:特に、盲導犬は人懐っこいからね。誰にでも近づいていくもんね。 河口:ただ、そのケースとしては、頻度としてはほとんどゼロと思っていいです。私自身は20年近く盲導犬といますし、私の周りにも盲導犬ユーザーがいますが、そういうふうに「人からいたずらをされた」というのは、ニュースでは聞いたことはあるんですけど。 例えば、ホームから転落して事故死する視覚障害者がいますよね? でも、そんなに多くないですよね? 道を歩いていて交通事故に遭う人もいるんですよね? ガイドさんを使っている方でも。そうやって、ニュースにはなるけれども、実際にそんなに多くないと思っているから、みんな、白杖で歩けると思うんですよね。自分にはあまり関わってこないかなっていう。 ただ、今言われたことにものすごく近いのが、もし、盲導犬の具合が悪くなったらどうするのかなという不安は、私もあったんですよ。だって、顔の表情が分からないとかですね。 出村:それこそ、さっき中村さんがおっしゃった「命を預かる」ということへの不安というか、それにつながりますよね? 河口:そうですね。それも自分は十分に分かることができるんだろうかという不安があって、実際に、そこが一番痛い問題なんです。自分が分からなかったんじゃないかと思う時に、「情けないな」とか「悲しいな」と自然に胸が痛みますので、そこの部分ではストレスが大きいですね。具合が悪くて「ごめんね」と思う反面、回復してじゃれている姿を目の当たりにすると、やっぱり楽しいんですね。つまり、そのストレスを大きく上回るぐらいの面白さがあると思います。これも、ただ見えていれば感じないようなものなので、見えないから分からない、それはやはり残念だなとは思いますね。けがをしてても気づいてあげれなかったりするわけですからね。 FK:夜とかは、どうですか? 真っ暗でも大丈夫ですか? 河口:危ない時? FK:真っ暗な、 SJ:夜とか陽が落ちてからとか。 出村:街灯がないとかね? FK:でも、それは白杖では、おそらく無理。 出村:変わらないよ。 河口:というか、私は昼も夜も真っ暗なんで、条件は同じなんですね、光がないので。ただ、外から見た時は、人気のない所は犯罪という意味では怖いですね。 いつだったか、私が白杖で一人で歩いていた時に、地下鉄から自宅までの路地を夜の10時ごろに歩いてたんですね。すると、前から自転車が来て横をスーッと通って後ろで止まったんですね。その道は人気がないので、「うわ、まずいなあ」と思いながら歩いていたら「お姉さん」と言って肩をドンとたたかれたんですよ。もう、体が飛び上がって固まっていたら、私の前に来て手を握って、「お姉さん、目が見えないのに、よく頑張ってるなあ、偉いなあ」ってほめて、「この歳になるまで、70過ぎるまで人の痛みも知らずに生きてきたけど、最近、ようやく、そういう人の痛みが分かるような、人間らしい気持ちというものができてきたんですよ」とか言いながら、どこかに行かれたんです。 出村:なんの話やねん。 河口:本当ですよ。そして、家に帰ったら、「そういえば、さっき、手に何かを握らせていたな」と思って、家族に「これ、何? 」と聞くと千円札だったんです。千円札を握らせたかったんですね。 中村:寄付をしたかった? 河口:寄付をしたかったんでしょうね。でもパニックで、そんなの分からなくて、怖くて怖くて。それからもう、夜暗くなってからは歩かないようにしようと、怖いなと思って。 SG:そりゃ怖いな。いい人だったから、よかったですけどね? 河口:そう。 出村:でも、本当に分からないですもんね? FK:でも、白杖を持ってると、いい人と悪い人の区別ができる。これは新しい「第3の眼」。 SG:そうなの? 河口:どうやって区別するの? FK:これは白杖を持ち始めてから、よく分かった。 河口:みんな親切? FK:いや、親切な人はすごく親切、声かけてきてくれる人だね。声かけてきてくれる人に変な人はいない。 出村:でしょうね。 SG:あんまりいないですよね、確かにね。 FK:あんまりいない。 河口:そうね。私も会ったことないな。 出村:別にユーザーがどうとか、盲導犬を使うという時に、「弱視の人か、全盲の人か」によってさっきの「暗さに対する不安度」がやっぱり違う。普段から若干は見えている弱視の方からすれば「暗い所」というのは怖いけど、それに対して全盲の方で光が最初からない人などは、あんまり影響がないというか、昼間でも夜でも別に、 河口:変わらないよね? (01:20:00) 出村:うん、変わらないんですよね。恐怖度、全然、変化なし。ただ、昼間に光が見える人とか、ちょっと明るかったら物陰や動いているのがちょっと見えるような形だったら、明るいほうが若干いいかなとは思うけど、やっぱり、歩くことに関しては、明るくても暗くても同じこと、同じ所を杖でカンカンカンと探って、それこそ、そういった目印を使っての歩行というものを訓練で習うんだから、そういったところは人によって違ってくるでしょうね。 FK:僕は昼間より夜のほうが歩きやすいんだけど。車のライトもそうだけど、車がまず少ないでしょ? そして、マンションの共有廊下とか電気が消えてるでしょ? だから、目に反射する光が少ないのよ。昼間って、もともと目の形が悪い方は健常者と比べて眼球の形が違うんだって。そうすると、光が入ってくる時にプリズムみたいに反射する、その反射の仕方が違うんだって、病気の人と健常者で。だから、濁ったりするんだって。 出村:映り方も違うしね? FK:そうそう。夜では、それがないってこと。 出村:なるほど。夜だと光がないから? FK:そうそう。 河口:なるほどね。 FK:だから、夜のほうが歩きやすい。 出村:夜のほうが見やすいわけね? FK:うん。でも暗いからね。 出村:暗いと怖い? FK:そう。そして、そこに盲導犬がいると、そういうのがなくなるのかなと。 出村:そうやね。ワンちゃんが見えてたら、夜でもね? 河口:そうですね。 SG:FKさん? 昼間でも普段から目をつぶって歩きましょう? FK:やだね。 出村:まあね。でもそれはやっぱり見えている間に、「いずれ見えなくなっても歩けるように」というのを今のうちに訓練しておくと、おら、今だったらまだ自分で確認ができるじゃない? 河口:私が、最初の盲導犬を使っている時はまだ見えてたんですよね。それで、独立歩行ができるかどうかのテストがあったんですけど、当然歩けるわけですよね? なぜなら、見えてたから。当然、合格だったわけです。 もともと、私が失明してからまた見えるようになった時に、固く心に決めてたのは、「見えなくなったら、絶対に一人で外に出ない」ということでした。なぜなら、物騒だから。少しでも光がある間は、光と影が分かる間は一人で外に出るけれども、それが分からなくなったら絶対外に出ないよ、だって恐ろしいもの、命が惜しいから出ませんって思ってたのね。 最初の盲導犬の時はまだ少し見えてて、一人で歩けるぐらいだったので、その間に犬が周りの環境を覚えたんですよ、指示が出しやすいので。例えば、職場のビルに関しても、「ここで止まってドアを開けたら、ドアの中に入っていく」ということを何度かやっていると、「仕事場のドア」というふうに覚えるんですね。 しかし、2頭目の盲導犬は、私が見えなくなってから貸与してもらったので、その慣れるまでの間で指示が出せないんですね。最初の盲導犬は私の環境を全部覚えてたので、細かい指示をしなくても動けてたんですね。「地下鉄に行こう」と言えば、地下鉄に行けてたんですね、その子はね。 でも、その2頭目の子はまた最初からだから、地下鉄を教えなきゃいけないんだけど、その時はもう全く光がなかったので、指示がとてもやりにくかった。だから、もし光がない全盲の方が盲導犬を貸与した時には、最初はぜひガイドさんと一緒に行って、自分のルートというものを犬に覚えさせるのがいいと思います。 出村:犬にね? 河口:何度か行くと犬のほうが覚えるから。ただ、犬というのは変な覚え方もするんですよ。地下鉄を降りて改札を抜けてまっすぐ行けばエスカレーターがある所なんですけど、そこのエスカレーターを上ると私は聞いてたのですが、結構遠かったのでちょっと不安になって人に尋ねたんです。「エスカレーター、通り過ぎたかな? 」って聞いたら、「いや、もうちょっと先です」と言われたので、「ありがとうございます」と言って乗ったんですね。 そして、次も同じことをやってしまったんですね。すると、それ以後はエスカレーターの位置はばっちり分かったんだけど、エスカレーターの前に来ると、犬が止まって「ほら? お母さん? ここで人に聞かなきゃ? 」と、人を見つけるようになったんですね。 SJ:そこまでがセットで? 河口:そう。そのパターンで学習をしちゃったから、「エスカレーター」って言ってるのに、わざわざ通りすがりの人の所に案内して「ほら? お母さん? ここで人に聞きなさい? 」というふうに、変な癖がついちゃうこともあるんですね。 出村:へえ。 河口:私の以前の職場でも、職場のドアの1つ先に「ほか弁」のドアがあるんですよ。最初の頃に、間違えてそこに何度か入ってしまったんですね。「いらっしゃいませ! 」と朝から言われるから、「すいません、間違えました」と言って戻って職場のビルに入ったんです。 そしたら、またそのパターンを覚えて。まず「ほか弁」に入って、「いらっしゃいませ」と言ってもらって、「いや、違います」と言って出てきて職場に行くというのがその犬ののルートになってしまったんですね。 SJ:ある意味、従順ですね。 河口:学習能力があるというか、なんというか。 中村:それは修正はできないんですか? 河口:いや。大体できましたけど、やっぱり、たまに、その弁当屋さんに入ってましたね。 SG:面白い。 FK:面白い。それが生き物の楽しさですね。 河口:そうですね。本当にね。 中村:例えば、さっきも途中で、人に道を聞いてエスカレーターに行くというパターンで覚えてしまったら、それを、道を聞かないでエスカレーターに行くということはなかったんですか? 河口:それは、ならなかったですね。 中村:それは、ならなかったですか? 河口:まっすぐエスカレーター、エスカレーターと言っても、彼女にしてみたら方向が同じなので。同じ方向のエスカレーターに行きながら、そこから人が来たら、「はい、お母さん? ここで、はい! 」と立ち止まって「聞きなさい? 」ってなってるから、「エスカレーターは、どこですか? 」って聞いて、「前ですよ」と言われて、「そうですね」って答えて。 中村:例えば、その時に人が前方から来なかった場合は、まっすぐエスカレーターに行くんですかね? 河口:行くんじゃないかなあ? 中洲川端で、人がとても多い所だったものでね? 中村:ああ、そうか。 河口:ほとんど、人が来るんですね。でも、誰もいなければ、エスカレーターに行くんだろうと思うんですけどね。そうならないためには、やっぱりガイドさんと一緒に行って不要な動きを覚えさせない、学習させないことですね。 SG:ルートって結構いくつも、いろいろと行く所あるじゃないですか? 何パターンも覚えてくれるものですか? 河口:結構、覚えてますね。フォローアップで訓練士さんが来られるんですよ。それで、「いつも行く所を歩いてください」と言われるから、歩いていると犬がいつもの習慣で止まるから、いつも私がどんな所に行っているか分かっちゃうんですよね。訓練士さんが「あ、このファミレスによく行くんですか? 」なんて言われて、「あ、そうですね」なんて返して。犬が止まって「今日は入る? 」みたいな感じで止まっているので。 出村:プライバシーもへったくれもないな。 SG:そういうところまで? 河口:だから、あんまり変な場所に行けないななんて思いましたね。 小さな個人商店みたいな所に行っていた時も、よく盲導犬と一緒に行って、そこのおじいさん、おばあさんに品物を選んでもらって、盲導犬もかわいがってもらっていたんですけど、ご高齢でお店を閉められたんです。 すると、その閉店後にそこを通りかかると、盲導犬が閉まったシャッターに顔をこすりつけて、「行かないの? 」みたいにしているから、とても切ない気持ちになりましたね。 出村:それは切ないな。 河口:だから、「ああ、ちゃんと覚えてるんだ、律儀だなあ」と思って。 出村:確かにね。あと、費用というのは月々どれぐらいになりますか? もちろん、ワンちゃんによって違ったりするんでしょうけど。 (01:30:00) 河口:そうですね。違いますね。やっぱりフード代が。フードもいっぱいあるのでね。普通は訓練士さんが使ってたものをそのまま使うんですけど、やっぱり5000円ぐらいかかるかな? 出村:月々ですよね? 河口:はい。 FK:ほかには、かからないですか? 出村:マルキョウとかに売ってないですよね? FK:人によってばらばらだよね。そういう所で買うのでもいいと言う人と、やっぱりそういう訓練センターとか、 出村:指定フードみたいな? FK:そうそう。そういう店があるって聞いた。 河口:そうそう。『サポートセンター』という所が関東にあって。 SJ:盲導犬のサポートセンター? 河口:はい。盲導犬のです。そこから、 FK:関東から買うんですか? 福岡にはないんですか? 河口:はい。関東にあるんで。全国ということになってます。 FK:そこから取り寄せる? 河口:はい。でも、同じものなら『アマゾン』のほうが安いということで『アマゾン』で買う人もいれば、私は『グッデイ』で買ってました。『グッデイ』の人に尋ねたら、在庫がないから取り寄せてくださって。それも、その後、受取に行ったら袋が破けてたので、「すみません、新しいものを取り寄せますから」と言ってもう1回取り寄せてくださったんですけど、それもまた破けてたんです。ただ、実際にごはんがないわけだし、別に破けててもいいからですね。破けてても中身が減ってなければいい、どうせ破くんだから、構わないから売ってくださいと言ったら、「それなら、あげます」と言って、その2袋ともいただいてしまいました。 FK:別に、どこで買ってもいいんですね? 河口:いいんです、いいんです。 SJ:だから、基本的には最初に食べさせたフードで、あまり種類を変えないようにということを心掛けるみたいな感じ? 河口:そうですね。 SG:その種類を変えないのは何か理由があるんですか? 河口:それはその子によって好きなフードとかあまり好きじゃないフードがあって。 SG:毎回、同じフードって飽きませんか? ワンちゃんも。 出村:例えば、ペットを飼う時に、猫の場合なら、「今日はモンプチのまぐろ味にしよう」とか、「今日はカルカンのチキンにしよう」とか、そういうふうに選んであげられたりとかはできるというか、していいのかということ。 河口:あまり、しないほうがいいらしいんです。 出村:やっぱり、あんまり、しないほうがいい? 河口:なぜかというと、もし合わない場合、おなかをこわすことがあるので。だから、もしフードを変える時は、今のフードと新しいフードを最初はミックスします。そして慣れて、おなかも大丈夫だなというのが分かったら、新しいフードだけにしていくというふうに、少しずつ変えていくわけです。 出村:僕たち、人間的に考えたら、例えば、「今日から1年間、毎日、牛丼だよ? 」と言われると、がっくりするじゃないですか? でも、ワンちゃんは、そう思わないのかなって、やっぱり考えるんですよね。「ずっと同じものを食べさせて、ワンちゃん、飽きないのかな? 」とか、そのへんが、どうなんだろうなと思って。 河口:ところが、食いつくんですよ。ラブちゃんというのは吐いてでもフードを食べる、犬の中でもすごく食いしん坊なんだそうです。だから、あげると、がつがつ、がつがつって。「偉いなあ、毎日、この代わり映えのしないものを」って。 出村:ああ、同じものでも? 河口:人間だったら、「また、これなの? 」って言いますよ、絶対。それを、すごいごちそうのように、がつがつ、がつがつ食べてくれるから。 出村:じゃあ、そんな心配しなくていいわけですね? 河口:そう。 中村:逆に、変えないほうがいいような気はしますね。 SJ:体調が悪くなった時などに、ご家族がいれば、「ちょっと様子がおかしいんじゃない? 」って気づくのが早いかもしれないけど、もし、一人でワンちゃんと住んでいたら、気づくのが遅くなる可能性があるということですよね? 出村:変えることによって。 SJ:変えることによって。 中村:それもあるし、フードを変えたことに盲導犬のほうが何か意味を感じ取ってしまって、「これをしたら、これがもらえるのか」というような「条件つき」のようなものを学習してしまうような。 出村:人間でも、「テストで100点取ったから、今日はステーキだ! 」みたいなね? 「いいことしたから、これがもらえた」のような? それこそ、さっきのエスカレーターのように、誤ったことを学習させてしまったら、それはそれで、やはり問題になるような気はしますね。 FK:食べてはいけないものってあるじゃないですか? 例えば、ブドウとかを食べるとおなかをこわすでしょ? 河口:そうそう。 FK:そういう時に、どうするのかなと。 河口:食べた時ですか? FK:食べた時というか、食べたことが分からないじゃないですか? 食べたかどうかが。 出村:例えば、テーブルにブドウが置いてあって、勝手にもう食べられてるみたいな感じ? FK:そうそう。 SJ:そういうのはないんですか? 勝手に食べたりするとか。 河口:私の場合、ブドウの皮と空の皿があったから、「なんでこんな所に、空の皿があるのかな? 」と思ったんだけど、そして「何が入っていたんだっけ? 」ってなって、「あ! これ、ブドウの皮が入ってたんだ」ってなって。 中村:ブドウの皮ですか? 河口:はい。ブドウの皮。 出村:皮を食べちゃったんだ? 河口:皮を食べちゃったんです。 FK:でも、お腹こわしたでしょう? 河口:いや、覚えてないんですけど、たぶん、こわしてなかったと思います。ただ、犬としては大きい種類ですしね。だから、少量だったら、そんなにはないみたいですけどね。 FK:散歩中とか、そういうのないんですかね? 河口:とにかく食いしん坊で、何にでも食いつく感じだったんですよ。「拾い食い」と言うんですけど、2頭目・3頭目に関してはその拾い食いはなかったです。ただ、たまに、捨ててあるお弁当箱の中に何か食べ物が入ってたら食べそうになる時はありますね。そういう時は「NO! 」とガバッと顔を向けて口から出させるようにします。 FK:犯罪とかもあるじゃないですか? 河口:毒入りとか? FK:そう。毒入りのやつとかね? そんなのも心配なんですよね。「勝手に食べないかな? 」とか。 河口:食いしん坊かとか、性格にもよるし、やっぱり犬の性質でしょうね。 FK:ラブラドールなんて、何でも食べますよね? 河口:そうですね。何でも食べるんですよね。 SG:1日1食だけでしたっけ? 河口:朝と夜とで2食ですね。 SG:2食なんですね。 FK:散歩とか、しないんですか? 私が聞いたのは、例えば、仕事に一緒に連れて行くんだから、それが散歩になるから、特にそこまでしなくてもいいよということだったんですね。 河口:そうですね。 FK:逆に、ラブラドールは大きいから1日2回は散歩に行かないといけないとか、そういうふうにいろんな話を聞くんでですね。 河口:私自身は散歩が好きなので、週に何度か散歩しますけどね。でも、やっぱり、仕事に行く時は、もうそれを散歩とみなしてましたね、結構、歩いてたので。 実際、2人で散歩するよりも、マッサージの仕事所に行くといろんな人がいますから、そのこと自体がワンちゃんにとっては、かなりの刺激になるみたいですね。だから、気持ちがすごくリフレッシュできるようです。やっぱり、家に帰っていびきをかいて寝ているのを聞いてると、「やっぱり、緊張してるんだな」と思いますね。リラックスしているようで、実は、知らない所、知らない人に会うということで、かなり緊張をしてるみたいなので、その後はやっぱり、ぐっすり寝てますね。 逆に、散歩に出さずに、外にも出さなくて刺激を与えないということは、大きなストレスになるので、外に、どこかに私は必ず行きますね。 そして、普通の犬が散歩というと近場であったり、公園に行くぐらいですが、盲導犬というのはいろんな場所に行くわけですね。例えば、コンサートに行ったり、映画館に行ったり、バスに乗ったり、そう考えると、かなりの刺激を受けているんじゃないかなと思いますね。 SG:それで、8年間ぐらいしか盲導犬としては仕えない? 河口:使えないというか、大体が2歳ぐらいからなので、8年経つと10歳になるんですね。そして、「10歳で引退させてくれ」と言われています。実際は12~13歳とかでも盲導犬としていれるんですけど、早く引退させて老後は楽しく遊んでほしいと。年老いて体がヨボヨボに衰えてから解放されても、老後の楽しみができなくなっちゃうわけですね。 中村:余生を楽しむという? 河口:はい。元気なうちに定年という感じですね。 FK:そういう子に、また会いに行けたりするんですか? 河口:私の前の盲導犬は、預かっておられる方が時々連れてきてくれるんです。 FK:分かりますか? 河口:ん? FK:再会したらわかりますか? 中村:覚えててくれているかということ? FK:そうそう。 河口:覚えてはいるみたいですね。でも現在はこの子もいるからですね? この子は、前の子が私に寄ろうとするとガードしちゃうんですね。「私のお母さんよ! 」みたいな感じで。 SG:なるほど。 河口:だから、この子がおとなしくなってから会いに、「久しぶりだね」っていう感じでね。 SJ:出村さん、そろそろ3時ですよ? 出村:ええ? もう? 河口:ああ、ごめんなさい。 出村:いやいや、全然大丈夫ですよ。 (01:40:00) SG:私たちが盲導犬の訓練を受ける時に、1か月間でしたっけ? 行って受けますよね? その訓練で試験とかが最後にあるんですか? 合格とか不合格とか。「あなたは盲導犬を持っていいですよ、ダメですよ」とか。 河口:以前は試験があったんですよね。でも今は、しないみたいですね。試験というよりも、それも不合格、ダメとかじゃなくて、「まだ、独り立ちしないほうがいいな」とか、「もうちょっとトレーニングしたほうがいいかな」とか。結局、ユーザーとワンちゃんとのかみ合わせ方だから、ある程度のコミュニケーションがうまく取れているならいいんだけど、もうちょっとかかりそうなら「あと1週間、追加しましょう」とか。 SG:そんな感じになるんですね? 河口:はい。ダメということはあまり。例としては、関西のほうだったと思うんですけど、そのユーザーさんからすれば2頭目のワンちゃんの時に前の子の名前をつい読んじゃって、新しい子の名前をなかなか呼べなかったんですね。これは私もそうなりそうな時があります。今の子は「うらら」という名前ですが、「らら」と呼ぶようにしています。なぜなら、前の子の名前が「ウェンディ」だったので、「う」をつけると、その名残で「ウェンディ」って、つい言ってしまうんですね。でもそれはやっぱりかわいそうなので、「う」を飛ばして「らら」と呼んでいるんですね。そんな感じで、そのユーザーさんは、ちょっとやめときましょうということになったそうですね。 SG:なるほど。 河口:それと、1回カップリングしてみて、その関西の方の場合ですけど、ワンちゃんはすごく明るくて、ユーザーさんもすごく明るい方だったので、「合うよね? 」ってカップリングしたら、それがどんどん、どんどん、両方とも暗くなってきて。 中村:それは? 河口:分からないですけど、たぶん、相性が合わなかったんでしょうかね? 外から見ていたら、絶対に合うと思っていたんだけど、その2人を見るたびに暗くなってきたから、「これは、まずいね? 」ということで、2人とも離婚されましたね。そして、そのワンちゃんは別のユーザーさん、さっきのユーザーさんも別のワンちゃんとカップリングしたら、そっちではうまくいったらしいので。 中村:自己主張がお互いに強すぎたんですかね? 河口:そうか。明るいというのは、そういうところもあるのかな? FK:どこの盲導犬協会でもいいんですか? 河口:え? FK:九州は糸島にあるじゃないですか? 九州じゃないとダメですかね? 河口:そうではないみたいですよ。 FK:どこでもいいんですか? 河口:うん。 だけど、その3週間の訓練を、例えば大阪や東京に行ったりして訓練を受けるってこと? 河口:そうそう。泊まり込む訓練は。 FK:そして、残りの1週間は福岡で受ける? 河口:そうですね。それが福岡でしてくださるかどうか、協会によって違うかもしれない。昔は、ない所もあったんですよ。 FK:ない所もあるんですか? 河口:うん。「帰ったらそのまま頑張ってくださいね」みたいな。 中村:盲導犬協会というのも、つながりがあるような、ないようなっていう感じですよね? 河口:そうですね。 中村:お話を伺ったら、ラジオのCMで「白杖の訓練みたいなことをやってます、盲導犬協会がやってます」みたいなことを言われてたから、福岡の点字図書館に体験会で来てる時に、「こういうことを聞いたんですけど、やってるんですか? 」と聞いたら、「いや、やっている所と、やっていない所がありますよ」みたいな感じで言われたので。 河口:そうですね。 中村:だから、それぞれによって違いもあるみたいですね? 河口:違いますね。指示に関しても、ここは英語ですが、日本語でするところもありますよね。「待て」とかですね。私の場合は「待っとって」なんですよね。 出村」博多弁、分かるんだな? 河口:そう。博多弁やんって思って。 FK:じゃあ例えば、僕が関西で受けたいと申し込むこともできる? 河口:できるんじゃないかな? FK:僕、関西が好きなんです。 出村:別に自分が遠くても構わないと言うのなら、全然いいんじゃない? 河口:2つぐらいあるんじゃないですか? 京都と大阪で。 FK:大阪もありますよね。そんなこと言われたら2つとも行きたくなる。 出村:好きなだけ行きなさい。河口さん、すいません、めちゃくちゃ長く話してもらって。こんな時間になっちゃった。 河口:いえいえ、どうもありがとうございました。 全員:本当にありがとうございました。 河口:私は今回初めて、視覚障害者の方に盲導犬の話をしたんですよ。今まで盲導犬の話をするとなったら、大体、学校とか大人の方がほとんどだったんです。 SJ:健常者の前で話す機会が多かったんですね? 河口:そうですね。だから、今日はすごくうれしいんです。 出村:でも不思議ですよね? 本来なら、視覚障害者がその情報を一番必要としているのにね? 河口:だから、ちょっとでも面白く思ってほしいなと思ってしゃべりました。 出村:本当に面白く、勉強になりました。ありがとうございます。 河口:こちらこそ、本当にありがとうございました。 FK:公園とかで犬同士でけんかになったりとかしないですか? 河口:盲導犬同士? FK:いや、普通の犬とかでも。 河口:以前は、「犬同士での接触が絶対ないように」って厳しく言われていましたが、最近では「ユーザーさんに任せます」ということになってますね。 FK:けんかはしない? 河口:まず、こっちからはしないですけど。 FK:小さな犬とかが仕掛けてくるでしょう? 河口:そういう時はありますね。でも、そういう時は飼い主さんがよけてくださるのと、最初の1年間はやはり環境に慣れてないので落ち着かないんです。なので、「犬が環境に慣れるまで、話しかけないでください」というチラシを作って、公園なんかで「渡しとってー」ってそこに散歩に来る人たちに渡していました。そうやって読んでいただいて、「1年間は声をかけないで」ということで、皆さんが私を見ても知らん顔で通ってくれていて、「もう大丈夫です、そろそろ慣れたので」ってなって、今ではしょっちゅうご挨拶してます。犬はお互いのお尻をくんくんしたり、そういうのがこの子の憂さ晴らしというか、ストレス解消みたいな感じでしょうね。 出村:なるほどなあ。 河口:触りませんか? 出村:いいんですか? 河口:いいですよ。今はただの犬ですから。ハーネスをつけている時は仕事中ですけど。 中村:なるほど、それでオンとオフが切り替わるんですね? 河口:そうなんです。 SJ:広い所に行きましょうか? (全員で盲導犬のうららちゃんを触りに集まる) 出村:うわ、かわいい! ガイドさん:しっぽをバタバタ振ってる。 河口:とても喜んでます。こんなに喜ぶのも珍しいです。 出村:うわ、ありがとう、うららちゃん。 ガイドさん:帰るって分かったのかな? しっぽが下がってしまってる。 出村:そうなんですか? うわ、切ないなあ。うららちゃん、また遊びに来るからね。河口さん、水曜日に、ここに来てるんでしょ? 河口:そうです。遊びに来てください。それじゃ、皆さん、さよなら。ありがとうございました。 全員:どうも、本当にありがとうございました。 出村:また、聞かせてください。本当にありがとうございました。 (01:51:28)